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2005年10月
故障診断の途中で作られたあらたな故障原因
 アイドリング時にエンストする事があるという、'94年式のカルディナ(E-ST191G、エンジン型式3S-FE、走行16万km)のトラブル事例を紹介する。
 エンスト後の再始動性は良い時とそうでない時があるらしく、すでにフューエル・ポンプやディストリビュータおよびECUを交換してみたが、状況は変わらないとの事で車が持ち込まれてきた。
 問診の結果、不具合は暖機途中で発生する事が確認できたので、外部診断器を接続して冷機状態からセンサー類の信号をデータモニターしてみた。
 その結果、水温センサーの信号電圧が急変した直後にエンストしてしまった。(図1参照)
 この事はダイアグノーシスにも異常検出されていた。
 水温センサーのコネクタをゆすってみても信号電圧は変化しない事から、端子の接触不良によるものではなく、センサー内部の故障と思われる。
 念のためエンジンを冷やして、再度同じテストをおこなった結果も同様の症状だったので、これがエンストの原因と診断を下した。
 水温センサーを交換して、同じ条件でテストを実施しても不具合現象が発生しないので、トラブルは完治したと判断し、アイドル回転や空燃比フィードバックの点検をおこなってみると、イニシャル・タイミングが遅れていたので調整しようとディストリビュータを動かしたとたんに、アイドル不調になってエンストしてしまった。
 再始動後も同様の状況になるので慎重に調べたところ、ディストリビュータへのワイヤハーネスを少し動かすとエンストする事が判明した。
 コネクタの接触不良かと思ったが、端子がゆるくなったり錆びたりはしていないので、ディストリビュータ内部を点検してみると答が見つかった。
 図2に示すように、イグニッション・コイルの1次線がディストリビュータのシャフトにこすれて、ショートしかかっていたのである。
 本来であれば、この配線はイグニッション・コイルに設けられた溝にはめこまれているはずであるが、コネクタ取付部が割れているために、配線が引っ張られた時に溝から外れてしまったと考えられる。
 前述したように、ディストリビュータを中古品に交換した際にこの事に気付かなかったものと推測する。
 根本的な故障原因を追究する過程で、あらたな人為的故障原因を作ってしまった訳である。
 手あたりしだいに部品を交換するという「バクチ」的な修理方法では、時としてこのような二次故障の原因を作ってしまうので、もっと科学的かつ理論的な故障診断手法が必要である。
《技術相談窓口》

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