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2008年4月
外してはいけないボルト
 外してはいけないボルトを外したために、余分な作業をしてしまった平成9年式マークII(車両型式E-JZX100、エンジン型式1JZ-GE)のトラブル事例を紹介する。
  詳しく話を聞くと、そもそもはタイミングベルトの交換作業で入庫。その時にオイル漏れがあったので、ついでにカムシャフト及びクランクシャフトのオイルシールを交換したらしい。
  そのカムシャフトのオイルシールを交換するときに、図のVVT-i(カムシャフトタイミングプーリー)の周りの外してはいけない5本のボルトを緩めたらしい。
  作業中に、近くに張ってあったラベルを見て、外してはいけないボルトだと気がついたようである。
  そこで電話相談をもらったのだが、実は以前にも他工場で同じような相談があり、調べてみたところ、このVVT-iは精密に組み立てられており、初期位置が決められているらしい。(バックラッシュ及び位相)
  しかし、このボルトを緩めるとその初期位置が狂ってしまうので、再使用できないことが分かった。(修理書には「ボルト5本は絶対に取り外さない」と記載されている)
  そのまま締め付けても、エンジンに大きな不調は出ないようだが、初期位置がずれることにより、ECUが制御する可変状態が目標とずれてしまうので、システム異常と判断することがあるようである。当然、その場合はチェックランプが点灯するということで再使用はできないということだった。
  そのことを伝えるとVVT-iを交換するということになった。
  数日後、同じ人から電話があり、VVT-iを交換したのだが、エンジンがかからないというのである。
  もしかして、本誌の昨年4月号で紹介した、クランクシャフトプーリーのロータの突起部を折ったのではないかと思い聞いて見ると、「実はVVT-iを交換してエンジンがかからなかったので、いろいろと調べた結果、ロータの突起部が折れていたので、そちらも交換した」と言うのである。
  ということで、基本点検から行ってもらったが、とくに問題はないようだった。
  ダイアグノーシスが正常で、火花が飛んでインジェクタの作動音もある。バルブタイミングも再度確認してもらったが間違いない。また、可燃性スプレーを吸引させてもかからないという。
  これでかからないわけはないと思い、1度プラグを外して清掃するよう言っておいた。
  しばらくして電話があり、プラグを清掃したらかかったということであった。
  ロータの突起部を折ったことにより、エンジンが始動できず、それを調べるうちにプラグがくすぶってしまっていたのではないかと思われる。
  最近は、いろいろな新しいシステムが増えてきているので、今後は、作業前にエンジンルームをよく見渡す必要があるかもしれない。
《技術相談窓口》
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