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2008年11月
外部診断機は万能診断機ではない

  SRS警告灯が点灯したままという、平成11年式ホンダバモスのトラブル事例を紹介する。
  外部診断機にてダイアグノーシスコードを確認したところ、(左側シートベルトプリテンショナ展開回路断線)と表示していたので、左側のシートベルトプリテンショナを交換したが、SRS警告灯が消灯しないという。
  SRS警告灯は修理が終わった後でも、ダイアグノーシスコードを消去しない限り点灯したままなので、念のため、「ダイアグノーシスコードを消去しましたか」と聞いたところ、何度やっても消去できないという。消去できなければ現在故障となるので、プリテンショナを交換した今、配線の断線かSRSユニットの不良ということになる。
  「配線が断線していないか調べてください」と伝えようとしたときに、ふと、ダイアグノーシスコードの番号は何番なのだろうかと思ったため、先方に確認してみた。
  「4−1」であるという。
  修理書で確認してみると、「4−1」は(右側シートベルトプリテンショナ展開回路断線)となっていた。
  ホンダバモスの資料がなく、ホンダライフの資料を見ていたため、この2車種はダイアグノーシスコードが異なるのであろうかと考えたが、何か腑に落ちない。
  どのメーカーでも、年式が同じような車種であれば、だいたい同じダイアグノーシスコードを使用しているはずだと思い、「左右のプリテンショナをカプラだけでも入れ替えてみてもらえないですか」と伝え、連絡を待った。
  後日連絡があり、「左右のプリテンショナを入れ替えたところ、ダイアグノーシスコードも左右入れ替わった」とのこと。
  犯人は外部診断機そのものだったのである。
  最近、外部診断機について、「外部診断機があれば、配線の断線や機械部品の劣化など、全てわかるのか」といった問い合わせを受けることがあるが、外部診断機はあくまでも、過去から現在に及ぶまでのダイアグノーシスコードの確認や、車の情報をリアルタイムに得たり、アクティヴテストの実施といった、整備士をサポートする機械であるに過ぎない。
  今回のケースは多少特異なケースではあるが、外部診断機を絶対的なものと考えてしまうと大きな落とし穴にはまってしまうという事例である。
  いかに高価な外部診断機を使用していても、外部診断機に表示された車の情報が正常なものなのか否かの最終的な判断は、整備士がするしかないのである。

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