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2016年7月
SRS 警告灯が消灯しない場合の故障診断方法

最近、国の検査場で継続検査を受ける際に、SRS 警告灯が正しく機能しないと検査に合格しないという取り扱いになっているらしく、それに関する問い合わせが増えているので、その事例を紹介する。

平成12年式のハイエース・レジアス(GF-RCH41)のSRS 警告灯が、エンジン始動後もゆっくりと一定周期で点滅しており、DTC を調べてみると、「B0131」(運転席シートベルト・プリテンショナ回路断線)を表示したとのこと。

そこまでは判ったが、この後どのように調べていけば良いのかという相談である。

シートベルト・プリテンショナにしても、運転席や助手席のインフレーターも同様に、火薬に点火させるための装置が設けられており、その電気回路に断線や短絡がないかどうかを、SRS/ECU が常に見張っている訳である。(図1)

配線の途中には必ずコネクタが存在するので、不具合がどの部分で発生しているのかを見極めなければならない。

エンジンに例えるなら、フューエル・インジェクターのコネクタを外して、インジェクター側の端子にサーキット・テスターのプローブを当てて導通を点検すれば良いのだが、SRS の点火回路にはそのようなことはできない。

その理由は二つあり、一つはテスターから流す電流により点火回路が作動(誤爆)してしまう恐れがあることと、もう一つは静電気などの要因で誤爆しないように、コネクタを外すと同時に、端子間を短絡するようになっているからである。(図2)

したがって、アクチェータ単体の点検はできないため、それに代わる物を回路に接続して、DTC が消えるかどうかで判断すれば良いのである。(図3)

アクチェータを交換してみるという方法もあるが、中古部品の使用が禁じられているSRS の場合は新品しか使えないので、その予測が外れた時のリスクが大きい。

前述の点検に必要な物は、図4に示す抵抗である。

点火回路とほぼ同じ抵抗値(約5Ω前後)を外したコネクタの上流側に接続して、DTC メモリーを一度消去したのちに正常コードを表示するのであれば、点火回路に原因があると判断できるのである。

この事を現車でおこなってみると、正常コードを表示するようになったので、プリテンショナが組み込まれた運転席シートベルトを新品に交換すると、SRS警告灯は消灯するようになった。

これとは反対に、SRS 警告灯が点灯しないのでメーターパネルを外してみると、ランプが外されていて、それを取り付けると今度は点灯しっぱなしになったという事例もあり、DTC を調べてみると、すべてが展開済みになっていたというお粗末な中古車も散見されるので、オークションで購入する際はこのあたりも慎重に調べないと、あとになって大損してしまう。

《技術相談窓口》


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