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2022年9月
夏の風物詩、エアコン冷えない

高速道路など高めのエンジン回転でしばらく走行していると、エアコンが全く冷えなくなるという平成20年式ハイエース(車両型式KDH201V、エンジン型式1KD、走行距離51万q)のトラブル事例を紹介する。

不具合が発生する条件の詳細だが、ユーザーの話ではエンジン回転が2000〜2500回転ぐらいで10分以上走行していると冷たい風が出なくなり、コンプレッサOFFの風の温度になるとのこと。

そのまま走行していても復帰せず、20〜30分間エンジンを止めていないと冷たい風が出ないとのこと。

入庫した工場では、エンジン回転を3000回転くらいで空吹かしを15分ほどしていると不具合が再現したそうで、その時はコンプレッサのマグネットクラッチがOFFしているとのこと。

その時にクーラースタビリティアンプ(エアコンC/U)のコネクタ部でエバポレータ温度センサ(FR、RRとも)の単体抵抗を測定したが問題なし。

コンプレッサ、ラジエータファンモータ、プレッシャSW、クーラースタビリティアンプを交換しても変化がないとの事で当会に入庫。

ゲージマニホールドの値は、高圧が1.2〜1.3MPa、低圧が0.2MPa(外気温は約30℃)少しガスが少ない気もするが、冷風は出ている。(不具合発生時は完全にぬるい風ということなので一旦保留)

エンジン回転を3000回転ぐらいで空吹かしを20分ほどしてみるが不具合は再現しない。

その時にスキャンツールのデータモニタを見てみると完全にエンジンが暖まっている状態で、エンジン冷却水温度が約100℃に対してラジエータ水温が47℃を表示していた。

これは明らかにおかしい。

エンジン冷却水温度センサ(水温センサ)はエンジン本体、ラジエータ水温センサはラジエータ出口からエンジン入口の間のウォータパイプに付いている。(それぞれの位置は図1を参照)

エンジン冷却水温度センサはエンジンの暖機状態やオーバーヒート判定に使用、ラジエータ水温センサはラジエータファンの制御に使用している。

ラジエータで冷却水を冷やすと言ってもこんなに水温が下がることは無い。

考えられるのはラジエータの詰まりやサーモスタットの開弁不良による冷却水の循環不良である。

冷却水循環不良が起きると当然オーバーヒートする。

オーバーヒート気味になると、エンジンECUがコンプレッサをOFFにし、オーバーヒートを防止する制御が入っている車が多い。

今回、不具合現象は再現しないがこの車両もオーバーヒート気味と判定した時に、エンジンECUがクーラースタビリティアンプに対してコンプレッサをOFFさせる信号を出したのではないかと推測した。

実際にオーバーヒート判断によるコンプレッサOFF制御が入っているかを確認するために、エンジン冷却水温度センサのカプラに可変抵抗を接続してみた。

データモニタ上の水温を115℃付近になるように可変抵抗を変化させるとコンプレッサがOFFになった。

その状態から100℃付近になるように可変抵抗を変化させてもコンプレッサはONにならず、90℃まで変化させるとONした。

以上の内容から、この車両を診断した時よりも気温が高い日やエンジン負荷が大きい条件で走行している時に、冷却水の循環不良によりエンジン冷却水温度がさらに上がってオーバーヒート気味になりエンジンECUがコンプレッサをOFFさせていると判断した。

そしてエンジンをしばらく止めてエンジン冷却水温度が90℃付近まで下がらないと、コンプレッサをONさせないという現象が発生したと思われる。

修理の方法としてラジエータの詰まりの確認、サーモスタットの開弁状態を確認するように伝えて返車した。

《技術相談窓口》


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