エンジン不調は無いが、時々エンジン警告灯が点滅することがある、という平成23年式ビーゴ(車両型式ABA-J210G、エンジン型式3SZ、走行距離173,300q)の事例を紹介する。
ユーザーの話では頻繁ではないが走行中にエンジン警告灯が点滅することがあるとのこと。
ただこの車は社用車なので、日によって運転手が変わり、エンジン警告灯の点滅を指摘した運転手が毎日運転している訳ではなく、もしかしたら他の運転手が運転していても現象が発生いるのに気づいていないだけかもしれない。
自己診断をするとP0301:1番シリンダミスファイヤ、P0302:2番シリンダミスファイヤ、P0300:複数シリンダミスファイヤを表示。
スパークプラグを点検すると電極が摩耗していたので純正の新品に交換して納車するとしばらくは良かったが、また時々エンジン警告灯が点灯するが不調は無いとのことで入庫。
自己診断は前回と同じくP0301、P0302、P0300が残っていた。
イグニッションコイルをNGKの新品に交換して試乗をすると、エンジン不調はないままだが、エンジン警告灯が点滅してP0300、P0301、P0302、P0303、P0304と全てのシリンダのミスファイヤを表示するようになったとのこと。
しかも全ての故障コードを同時に検出するとのこと。
点火系のアースも見てもらったが問題なかった。
こういった状況で当会に入庫した。
一旦自己診断を消去してエンジンを再始動して空ぶかしを何度かしているとエンジン警告灯が点滅しだした。
やはりそのタイミングで1〜4番までの全てと、複数シリンダミスファイヤを同時に検出している。
このエンジンはイオン失火検出システムを搭載しており、イグニッションコイルが4極コネクタになっている。
通常のイグニッションコイルは3極コネクタで、IG電源、点火信号、アースで構成されているが、このシステムはもう1本の線で、点火した後の燃焼室に発生するイオン電流を検知する仕組みになっている。
イオン電流検出端子をオシロスコープで測定してみたが4気筒とも5V一定で全く変化がなかった。
正常であれば図のような波形が出るはずである。
過去の事例としては純正以外のスパークプラグやイグニッションコイルを使用すると今回の自己診断コードを検出することが何件かあったが、純正の新品のスパークプラグと、純正ではないがNGK製の新品のイグニッションコイルを付けているので、新品がいきなり4個とも悪くなったとは考えにくい。
イグニッションコイルを交換する前後の違いといえば、交換前は1、2番の失火検出だったのに対し、交換後は4気筒全ての失火検出である。
なぜ新品に交換したら悪くなるのか?
なぜ4気筒同時に自己診断を検出するのか?
イグニッションコイルを外して確認したが、確かにNGKのイグニッションコイルが4気筒とも付いている。
念のため品番を確認しようとNGKのホームページを確認すると、ビーゴ(J210G)のNGK品番は「U5077」となっていたが、この車についている品番は「U5417」だった。
なぜ品番が違うのにエンジン不調が起こらないのか?
このイグニッションコイルはどのエンジン用なのか?
この車はダイハツだが、トヨタのラッシュとしても販売されている。
エンジン型式は同じ「3SZ-VE」である。
ラッシュのイグニッションコイルの品番をNGKのホームページで調べると、H18.1〜H22.4は「U5417」、H22.4以降は「U5077」となっていた。
この車はH23.1登録のビーゴなので、ラッシュの年式に照らし合わせても「U5077」のはずである。
依頼のあった工場にイグニッションコイルを取り寄せた部品商に確認するように伝えたところ、やはり部品商が間違って年式違いのイグニッションコイル(ラッシュ用)を渡していたとのことだった。
正しい品番のイグニッションコイルを取り付けたところ、エンジン警告灯の点滅は無くなったと依頼があった工場から連絡があった。
最初は本当に1番、2番のイグニッションコイルが不良だったのは間違いないと思われる。
今回のように、部品の姿や形は同じでも「イオン電流検出」に関する制御の中身だけ違うような場合は気付くのに苦労する。
《お知らせ》
長い間、実践!整備事例を毎月掲載してきましたが、諸事情により三ヶ月に一度の掲載に変えさせていただきます。
毎月楽しみにしていただいてた方には申し訳ありませんが、ご了承願います。
《技術相談窓口》
|