バッテリーがすぐに上がってしまうという平成21年式キャンターガッツPDGFB70B、走行距離144,534q、12V 仕様の車輌を紹介する。
工場に話を聞くと、半年前にバッテリーを新品に交換したという。しかし、今回の入庫時にまたバッテリーが充電不足となっていたとのこと。リビルトのオルタネータへ交換し、バッテリーも念のため新品に交換し納車。しかし翌日またバッテリー上がりを起こしたそうだ。その日は雨で夜に100qほど走行させたという。バッテリー警告灯は点灯していない。B 端子の電圧は正常という。こういった状況で当会に相談があり預かって診断することになった。
まず、オルタネータB 端子〜ボデーアース間を測定してみた。15.1V とやや高めながら発電は行っているようだ。このため、バッテリー警告灯が点灯しなかったのも納得できる。念のためIG 端子及びL 端子の電圧も測定すると正常であった。
次にバッテリー電圧を測定すると11.8V と低く充電ができていない。
このことからオルタネータB 端子〜バッテリーの+ターミナル間に電圧降下が発生する原因があると考えられる。
そこで、オルタネータB 端子とバッテリーのプラスターミナル間の導通点検を行った。なんと620Ωを表示した。この間は0Ωでなければならない。バッテリーが充電されない原因は分かったので発生個所の特定をしようと回路図を見ると中間コネクタは無かった。念のためハイカレントヒューズを確認しようと触るが端子部の取り付けボルトを外しているにも関わらずとれない。工具で注意深く取り外すと端子に焼損が認められた。ハイカレントヒューズの受け部は発熱により溶けており、とれなかったのも納得だ。ハイカレントヒューズの単体点検は正常であったが、上流側の端子部に抵抗が発生したため上記不具合となったと考えられる。焼損している部分を削り取り再度組み付けると40Ωほどに抵抗値が下がった。再度始動させてみるとオルタネータB 端子とボデーアース間及びバッテリーのプラスターミナルの電圧を比較しても大きな電位差が無くなり、電圧も13.0V 付近まで回復した。ジャンピングしなければ始動できなかった車輌は、充電が再開し、そのまま始動ができるようになったが接触抵抗の部分を触ると温度の上昇はまだあるようだ。
焼損の被害は大きくヒューズブロック本体の樹脂も溶けるほどで、修理はこの本体とヒューズを交換するように伝え診断を終えた。
今回の事例は半年前の入庫時より接触__抵抗が増加したことにより充電がほとんどできていない状況と、雨の中の夜間走行という電力消費が多い使用状況が重なったことが1日でバッテリー上がりを起こしたと要因と思われる。
営業車はユーザーにとって商売道具でもあり確実な診断、整備が求められる。
オルタネータ交換時は、B 端子だけではなくバッテリーの端子間の電圧も測定することが大事である。
《技術相談窓口》
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