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平成15年3月
点火系の実践的な点検方法 パートI(トヨタ車)

 先日、当会に「エンジンが始動しないので点火系(イグニッション・コイル、イグナイタ)の点検方法を教えてもらいたい。」という相談依頼があった。車は、平成7年式カローラレビン(車両型式 E-AE111、エンジン型式 4A-G)である。よく相談されることなので、今回は紙面を借りて紹介する。
 イグニッション・コイルやイグナイタの点検を行う必要がある場合と言うのは、電子制御式エンジンの基本点検である、燃圧、インジェクタの作動音、火花点検、ダイアグノーシスの点検を行い、火花だけが飛ばない場合やレーシング時や加速時に失速する場合である。(ただし、後者はイグニッション・コイルの点検のみ)。若しくは、ダイアグノーシスで点火系の異常コードが出た場合である。
 よく、火花点検だけをして、火花が飛ばないからといって、イグニッション・コイルやイグナイタの点検や交換をする人がいるが、これは間違いである。コンピュータによる点火制御をしている現在では、インジェクタも作動していない場合は、まず、クランク角センサーや、ECU系を点検すべきである。
 点火系の点検だが、イグニッション・コイルの点検は、各メーカーの修理書等を見ると、一次コイル及び二次コイルの抵抗を測定するようになっている。
(図1)
 しかし、実際には抵抗測定だけでは良否の判断は出来ない。レアショートや内部リークなどがあった場合には、抵抗値では分からないのである。
 では、どうすれば良いのかと言うと、実際に火花を飛ばしてみるのである。どのメーカーも、基本的な点火回路は
(図2)のようになっている。そこで、まず、イグニッション・コイルの(+)端子と(-)端子に、それぞれバッテリ電圧がかかっていることを確認する。(+)端子が0Vであれば電源回路の不良。(+)端子がよくて(-)端子が0Vであれば、一次コイルの断線かイグナイタの不良。この場合は、一次コイルの抵抗を測定すればどちらが悪いかは判断できる。
 (+)端子と(-)端子にそれぞれバッテリ電圧がかかっていることを確認したら、(-)端子にポイント付きのディストリビュータを
(図3)のようにセットする。そして、そのディストリビュータを手で回したときに、二次側に火花が飛べば、イグニッション・コイルはよいことになる。ただし、二次側には1cmのギャップを作ってやる必要がある。
 これは、過去にも何度か掲載したが、大気中で1mmのギャップで火花が飛んだとしても、約10kg/cm
2の圧縮圧力がかかる燃焼室では、飛ばないことがあるからである。よって、大気中では10倍以上のギャップを作って調べる必要がある。
 この時に、気をつけなければいけないことは、ポイントが閉じた時の(+)端子の電圧が、ほぼバッテリ電圧でなければいけないということである。
 仮に、電源回路に接触不良があった場合、最初に(+)端子にバッテリ電圧があったとしても、ポイントが閉じて回路が成立した時には、接触抵抗分の電圧降下が起き、(+)端子にかかる電圧が、その分だけ低下するからである。よって、火花が飛ばないときは、ポイントが閉じた状態での、(+)端子の電圧も点検する必要がある。(ポイントを長く閉じていると、コイルが焼けるおそれがあるので、数秒間で点検すること)
 1cmのギャップを作り、火花が飛べば、イグニッション・コイルはOKである。
 次はイグナイタの点検だが、あるメーカーの修理書を見ると「IC部品を多数内蔵しており、イグナイタ単体での点検は困難であるため、フローチャートに従い良否の判断を行う」となっている。簡単にいえば、火花が飛ばないときは、イグナイタ以外の点検を行い、問題なければイグナイタの不良だというのである。つまり、イグナイタの点検は出来ないというのである。
 しかし、次の要領で大体の判断はできる。
 先ほどの、イグニッション・コイルの点検で火花が飛べば、回路を正規の状態に戻し、
(図4)のように、ECUからイグナイタに来ている点火指示信号端子に、乾電池を2つ直列に接続し、3Vの電圧を短時間で「カチカチ」と、かけたりかけなかったりするのである。
 これは、通常、イグナイタをON・OFFさせる点火指示信号
(図5)が、ECUから出ているので、その代わりの信号を乾電池でいれてやることになる。
 これで、火花が飛べば、イグナイタは良いということになる。飛ばない場合は、その線とアースでの短絡を点検し、問題なければイグナイタ不良となる。
 この、点火指示信号がどれかというのは修理書等を見なければわからないが、イグナイタのコネクタを接続した時と、開放した時にそれぞれ0Vの端子があるので、それにかけてやればよい。
 ただし、ホンダ車には、このイグナイタの点検方法が使えないものがあるので、修理書等を参考にしてもらいたい。

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