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平成16年9月
トラブル発生に備えての準備が大事

 冷機時の始動性が悪く、長めのクランキングをしないとエンジンが掛からないという。また、始動後は黒煙を吐いてガソリン臭いという平成7年式レガシー(車両型式E−BD5、エンジン型式EJ20ET)のトラブル事例を紹介する。
 車が持ち込まれた時は、すでに暖機が進んでおり、症状も出にくいということなので、まずダイアグノーシスを点検することにした。
 外部診断器を接続して異常コードを読み取ると、コード「21」(水温センサ系統)、コード「32」(O2センサ系統)、コード「33」(車速センサ系統)の3つの異常コードを表示した。(外部診断器がない場合は、運転席前下部にあるリード・メモリ・コネクタ《図1の1極黒》を接続し、チェックエンジンランプの点滅回数を読み取ればよい。)
 この3つの異常コードはあくまでも過去に異常があったということで、現在も異常が発生しているとは限らない。外部診断器を使い、この3つの異常コードを消去した。
 症状からは、空燃比が濃いことが予想されたが、ダイアグノーシスで表示された異常コードのうち、関連のあるものは水温センサくらいである。他のO2センサ、車速センサ異常で冷機時に濃くなることはありえない。
 翌朝、外部診断器のデータモニタ機能で水温センサと、空燃比に大きく影響を与えるエ
アフロメータの信号が点検できるようにし、また、燃圧も点検できるように燃圧計をセットした。
 その状態でクランキングすると1発で始動でき、調子もよかった。当然、水温センサやエアフロメータなどの各信号には問題なく、燃圧についても正常値を示していた。
 暖機後は症状が出にくいということなので、すぐにエンジンを止めた。しばらくしてもう一度クランキングしたが問題なく始動できた。
 何度か同じ事をくり返しているうちに、エンジンの暖機が進んだので作業を中止することにした。
 午後から再度点検することにしたが、水温は40℃近くあり完全冷機とは言えなかった。症状が出ないかもしれないと思いながらクランキングすると、予想どおりすぐに始動することができた。
 症状が出なければ原因を見つけることは困難なので、根気強くクランキングをくり返した。
 すると、数回繰り返しているうちに、クランキングしても完爆する音が聞こえなかった。
 すぐさま、外部診断器のデータを見ると、水温が−12℃と表示されていた(図2)。実際の温度は何度かわからないが、これは明らかに異常な数値である。
 他のデータを見たり、燃圧を点検しているうちに、外部診断器のデータは水温センサの信号が51℃という表示になっていた(図3)
 エンジンの温度をテスタで実際に測ってみると50℃と外部診断器とほぼ同じであった。クランキングすると、すぐに始動することができた。
 水温センサの信号が、実際の温度よりかなり低いと、間違ってECUに入力されたことが、今回のトラブルの原因のようである。
 始動時には水温に応じた燃料を噴射するので、ECUが水温を−12℃と検出すれば、濃すぎにより始動しにくくなるし、また、始動後も水温に応じた補正をするので、黒煙を吐くのも当然である。
 水温センサのカプラに接触不良がないことを確認して、水温センサを交換するようにした。
 電気的なトラブルは、温度や湿度、振動といった外的要因により発生したり、しなかったりするので、いつ症状が出てもいいように準備しておくことが必要である。
 また、問診や症状から原因と推定されるところを絞り込んでおくことも重要である。
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