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平成16年11月
ワイヤレス・ドアロック・システムのトラブル2件
 今回は、ワイヤレス・ドアロック・システムに関するトラブル事例を2件紹介する。
〔事例1〕
 車は平成7年式セルシオ(車両型式E-UCF20)マルチファンクション・リモート・コントロールシステム(従来のワイヤレス・ドアロック機能にトランクルームのアンロック機能を追加したもの)で、トランスミッタを使用した場合、ドアロックの解除はできるが、ロックができないというトラブル。
図1
 運転席ドアにある、集中ドアロックスイッチではロックすることができるということなので、ドアロック機能自体は正常と判断できる。
 ワイヤレス・リモートコントロールの不良ということになる。ワイヤレスが全く効かないのであれば、トランスミッタの電池切れが最も怪しいが、この車のトランスミッタは図1のようにLOCK(ロック)とUNLOCK(アンロック)、それにトランク用のUNLOCKボタンは別々になっており、ロックだけが効かないということなので、電池は大丈夫と思われる。あとは、トランスミッタから信号が出ているかどうかを調べればよいことになる。
 トヨタ車は、標準装備のワイヤレス・ドアロックのトランスミッタには、FM電波を使用しているので、信号が出ているかどうかを調べるには次の方法で判断できる。
 まず、車のラジオをFM78.6MHzにセットする。(キー自体にトランスミッタが付いている場合は他の車のラジオを使用。または家庭用のラジオでもOK)トランスミッタをリヤガラスのFMアンテナ付近に持っていきスイッチを押す。信号が出ていれば、スピーカーに雑音が入るので、それにより信号が送信されていると判断できる。(スイッチは、押し続けると約10秒で送信を止めるので、さらに押し続けて点検する場合は、一度OFFにしてからもう1度押す)
 この車の場合、UNLOCKのスイッチを押すと、スピーカーから「ザー」っという雑音が入るが、LOCKのスイッチを押しても雑音は全く入らなかった。LOCKのみ信号が出てないということになる。
 念のためトランスミッタを分解し、LOCKスイッチの接点を磨いてみたが、信号はでなかったので、トランスミッタを交換することにした。
 なお、トヨタ車はFM78.6MHz以外にも、車種によって62.6MHz、83.7MHzを使ったものがあるので、このセルシオ(UCF20,〜H8.8)以外の車では、その車にあった周波数で行わないといけない。
 参考までに、トヨタ車のディーラーオプションのワイヤレス・ドアロックや一部メーカーでは、赤外線を使ったタイプがあるが、当然、この方法は使えない。
 赤外線タイプは、どうするのかというと、CCDカメラを利用するのである。携帯電話のカメラや家庭用のビデオを使うと、肉眼では見ることのできない赤外線が、CCDを通すと見えるから不思議である。
〔事例2〕
 平成8年式マークII(車両型式E-JZX100)トランスミッタと電池を交換したので、ドアコントロールレシーバーに、新しいトランスミッタの識別コードを登録しようとしたが、登録ができないという事例。
 識別コードの登録機能には、書き換えモード(登録済みコードは消える)、追加モード(登録済みコードは残置)、確認モード、禁止モードの4種類があり、トランスミッタを交換した場合は、書き換えモードでも追加モードでもよい。
 この車の場合、前のトランスミッタは使わないということなので、書き換えモードにすることにした。
 手順は表のように、非常に繁雑であり、また時間の制約もある。何度かトライしたが、手順が違ったり、押すスイッチを勘違いしたりと、登録ができなかった。
 頭の中で大体の手順を暗記し、更に他の人に手順を言ってもらいながら行うと、うまくセットすることができた。 勉強のためにと、他のモードも行ったが、手順を覚えてしまえば作業はうまくいった。
 すること自体は単純だか、フローチャートを見ながら、更に時間も気にしながらの作業は上手くいかないものである。この作業をする場合は、手順を覚えてからするか、他の人に指示を出してもらいながら行うことを勧める。
 また、このフローチャートも、車種によって6タイプあるので、それぞれの車に合った方法で行う必要がある。
 ドアロック装置といえば、各ドアにあるロックノブや運転席ドアのキーシリンダを回すことによりロッドが動くだけといった、単純な装置だったものが、今では電波を使い、コンピュータ、多重通信までも使うようになっている。ますます進化を遂げるいっぽうの車である。
 それに対応して、工場もメカニックも新たな知識を習得していかなければ取り残されてしまう。デジタルの進歩は、我々が思っている以上の早さで進化しているのである。
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