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2005年6月
O2センサを交換しても直らない「O2センサ信号系異常」のトラブル
 特に不調は感じないが、エンジン警告灯が点灯した、平成12年式のヴィッツ(GH-SCP10、エンジン型式1SZ-FE、走行6万8千km)の不具合事例を紹介する。
 ユーザーの話では、登り坂を走っている時に警告灯が点灯したので、すぐに停車して一度エンジンを停めて再始動したら、その後は点灯しなくなったので、そのまま工場へ直行したとの事。
 警告灯が点灯した前後の様子を、車を持ち込んで来たメカニックに尋ねてみると、別に気になるような症状は感じなかったらしい。
 外部診断器を接続して調べてみると、ダイアグコードは「P0171」(O2センサーリーン異常)を表示した。
 ここまでの点検をおこなって、「O2センサを交換したけど直らない…」という技術相談を持ちかけてくる事がしばしばあるが、O2センサの信号が異常になる原因は多岐におよぶため、エンジン全体で考えなければならない。
 エンジンを始動して、データモニタ画面に切り換えてECUのパラメータ(制御状態)を調べてみると、A/F学習値がプラス25%まで増量側になっている。
 ベースのA/Fがリーンになり過ぎているために、増量側へ目一杯制御しているにもかかわらず、それでもO2センサが一度もリッチ信号を出力しない事で、前述のダイアグコードを表示したものと考えられる。
 A/Fがリーンになる要素は、『燃圧低下』、『エンジン本体または点火系の不具合によるミスファイヤ』などが考えられるが、それらの測定値から判断して、燃料の出口に問題があると考えられる。
 さっそくフューエル・インジェクタを取り外して調べてみると、先端部の汚れが激しくて、噴孔が見えない状態になっている。(図参照)
 このエンジンのフューエル・インジェクタは10ホールタイプで、1つの噴孔がきわめて小さいために、汚れが付着した場合のガソリン自体による洗浄作用は従来の1ホールや2ホールの物より劣ると想像する。
 インジェクタ・クリーナ内に浸して、しばらくそのまま放置して汚れを取り除いて組み付けると、A/F学習値も低下して、走行テストをしてみてもエンジン警告灯が点灯する事はなくなった。

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