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2006年10月
電子制御スロットルの取扱いは慎重に
 アイドル回転が下がらなくなったというトラブル事例を2例紹介する。
  1台目は、平成13年式エクストレイル(車両型式NT30,エンジン型式QR20)。
  約18万キロ走行していたので、スロッ卜ルチャンバーが汚れているだろうということでクリーナーで清掃したらしい。
  すると、アイドル回転が高くなりハンチングするようになったということである。
  インジェクタの作動音を聞くと、定期的に止まっていた。アイドル回転が高いことによるフューエルカットが働いているようだ。
  この車のアイドル回転は、電子制御スロットルシステムにより制御しているので、スロットルモータのコネクタを外してみた。すると、アイドル回転は下がりハンチングもしなくなった。
  電子制御スロットルは、従来のスロットルチャンバー、AACバルブに代わるもので、エンジンECUがアクセルセンサ等の信号に基づいて、スロットルモータを動かすというシステムである。(図1)
  アイドル回転は、各センサーの信号を基に、エンジン回転を常に監視しながら電子制御スロットルのバルブを動かすという学習制御を行なっている。
  よって、スロットルバルブ付近にスラッジ等が付着して、アイドル回転が変化しても、常に学習しているために、一定に保つことができる。
  しかし、今回のように多量の付着物を取り除き、急激なアイドル回転の変更があった場合は、この学習制御では制御しきれないようである。
  メーカーの修理書を見ると、「スロットルチャンバーやECUを交換した場合は、急速TAS学習を行なう必要がある」となっている。
  この急速TAS学習(図2)というのは、従来のべースアイドル回転数調整に相当するもので、修理書には書いていないが、今回のようにスロットルバルブを清掃した場合も、この急速TAS学習を行なう必要があると思われる。
  急速TAS学習を行なうと正規のアイドル回転になった。
  経年変化のように、徐々に変化する回転は、学習制御により対応できるが、部品を交換したり、清掃により大きくアイドル回転が変化した場合は、この急速TAS学習が必要ということである。
  2台目は、平成15年式ウィングロード(車両型式UA−WFY11,エンジン型式DQ15)。
  アイドル回転が1500回転から下がらないという事例。
  何かの作業をしたかと聞くと、通常の車検整備であって、特にエンジン関係の整備はしていないという。ただし、中古車店でカーナビを取付けるためにバッテリのターミナルは外したかもしれないという。
  これも電子制御スロットルのモータのコネクタを抜くとアイドル回転は下がった。前述の車と同じく急速TAS学習を行なうとアイドル回転は正常になった。
  この車は、スロットルバルブを清掃したかどうかは不明だが、このようにアイドル回転が高い場合は、急速TAS学習を行なってみることが必要である。
  ただし、この急速TAS学習は時間を正確にしないと行なえないので、時計などを用いて正しくカウントする必要がある。

  ※TASとは「スロットル・アジャスト・スクリュー」の略
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