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2007年2月
ショートによる他への影響
 冷機時はアイドル回転が3000回転と高く、暖機後はハンチングを起こすという、平成9年式ワゴンR(車両型式E-CT51S、エンジン型式K6A)のトラブル事例を紹介する。
  冷機時のファースト・アイドル回転としては、この3000回転というのは明らかに高すぎる。そして暖機後にハンチングするというのは、この高すぎるアイドル回転が関係しているようだ。
  このハンチングが燃料カットによるものなのかを調べるために、インジェクタの作動音を聞いてみた。
  すると、回転が上がる時には作動音は聞こえるが、下がるときには聞こえなかった。
  アイドル回転が高すぎることにより、燃料カットが働いていた。
  このエンジンで、アイドル回転が高くなる原因は大きく分けて3つある。
  1つは、スロットルバルブが開いている。2つ目は、アイドル回転制御システムが回転を上げている。3つ目は、スロットルバルブ以降でエアを吸っている。(だだし、エア吸いで回転が上がるのは、バキュームセンサーを使ったエンジンに限る。また、エアバルブが付いている場合は、エアバルブが開いている可能性もある。)
  以上の3つだが、1つ目はスロットルワイヤーやストッパーの調整不良によりスロットルバルブが開いている。
  2つ目はアイドル回転制御システムのISCVや水温センサーの不良等が考えられる。
  3つ目のエア吸いは、スロットルボデー〜エンジン間のガスケットやホース類の外れ、破れが考えられる。
  これらの原因の切り分け法は、次のようにすると良い。
  まず、ISCVのエアの取り入れ口を指やガムテープ(吸い込まれないように注意)で完全にふさぐ。これで回転が下がればISCVが回転を上げているということになる。(エアバルブ付きは同じようにエアバルブの通路をふさいで回転が下がれば、エアバルブが開いていることになる。)
  回転に変化が無い場合、今度はスロットルボデー全体を手でふさいでみる。これで回転が下がればスロットルバルブが開いていることになり、下がらなければエア吸いである。
  要は、大気がどこからスロットルバルブ以降に吸われているかである。
  さっそくISCVの空気の吸い込み口を指でふさいでみた。するとアイドル回転は下がった。ISCVが開いて回転が高かったようだ。
  ISCVの単体点検(図1)を行なうと、ISCVの中の4つのコイルのうち、3つは約30Ωと問題なかったが、1つは1Ωとショート状態だった。これにより、ISCVが開いたまま動かなかったようだ。
  このISCVのトラブルだが、コイルの断線であれば問題ないが、ショート気味の場合は注意が必要である。
  それは、コイルがショートした場合、ECUに過大な電流が流れるので、ECUが壊れる可能性があるということである。
  ISCVを交換しても、ISCVが動かない時は、ISCVの電源やECUまでの配線を調べ、問題が無いようであれば、ECUも交換しなければならない。よって、見積もり等は充分に気を付ける必要がある。
《技術相談窓口》
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