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2007年5月
装置に見合うテスタが必要
 高速道路走行中、加速するとチェックエンジンランプ(以下チェックランプ)が点灯して、加速しなくなるという、平成5年式エスティマ(車両型式Y-CXR10G,エンジン型式3C-TE)のトラブル事例を紹介する。
  ダイアグノーシスを点検すると、コード35を出力した。
  このコード35は、ターボプレッシャーセンサー(以下プレッシャーセンサー)系統異常で、エンジン回転2400回転以上、アクセル開度52%以上のとき、吸気管圧力(過給圧)信号が異常に低い値または高い値が2秒以上続いた場合となっていた。
  要はターボが効いて、過給するべき時に過給していなかったり、逆に過給圧が上がりすぎた場合に警告するのである。
  このプレッシャーセンサーは、依頼者の工場ですでに交換済みである。
  ターボ車で加速異常の場合は、ターボの過給圧を測定するのが基本である。
  過給圧を測定できるコンパウンドゲージ(正圧と負圧の両方を測定できるテスター)をセットし走行してみると、最大過給圧は0.8kg/cm2だった。
  少し高いかなと思ったが、絶対に異常と思える値でもなかった。
  プレッシャーセンサーの電圧も最大で4Vくらいであり、こちらも問題なさそうであった。
  ただし、これらは依頼者の言う高速道路ではなく一般道路での走行である。
  やはり症状が発生するときのデーターを調べる必要があると思い高速道路を走ってみることにした。
  その前に、コード35が前述の条件でしか表示しないのかを検証することにした。
  これは、コード35が高負荷時の過給圧異常しか検出しないとなっているからである。
  仮に、低負荷時にプレッシャーセンサーに異常(断線・短絡)があった場合には、異常検出をしないのではないかと思ったからである。
  アイドル状態でプレッシャーセンサーのコネクタを抜くとチェックランプが点灯した。ダイアグノーシスを調べるとコード35を出力した。
  解説書には高負荷時に検出するようになっていたが、低負荷時でも検出するようである。
  もしかしたら、プレッシャーセンサーに圧力をかけていっても、異常検出するのではないかと思い、コンパウンドゲージに付属のポンプを使い加圧していくと、0.9kg/cm2を超えるとチェックランプが点灯し、同じくダイアグコード35を出力した。
  この結果と高速道路で発生することを考え合わせると、プレッシャーセンサーの信号自体に不具合があるのではなく、実際に過給圧が上がりすぎるので異常検出をするのではないかと予想された。
  実際に高速道路を走行してみると、予想どおり0.9kg/cm2をオーバーした。あきらかに過給圧の上がり過ぎである。
  こうなると1番怪しいのはウエストゲートバルブである。
  さきほどのポンプで加圧していき、どのくらいの圧力でロッドが動きはじめるかを調べてみると、いくら加圧してもロッドは全く動かなかった。おまけに圧力が逃げている音がする。内部のダイアフラムが破れているようである。これでは正常な動きをするわけがない。
  このポンプで加圧した時は、ロッドは動かなかったが、実際に過給した時は、漏れている量よりも過給する量の方が多いので、走行時はこのロッドは動いているものと思われる。
  ただし、過給圧が逃げているのでロッドの動き量が少なく過給圧が上がり過ぎ、今回のトラブルとなったようだ。
  ウエストゲートバルブを取外してみると、バルブ上下にはダイアフラムが動いたときのエアを逃がす穴があいており、そこにはオイルが付着していた。(写真1)過給に混じったオイルがダイアフラムを通り、大気に逃げた証拠である。
  このコンパウンドゲージを持っている工場は少ないと思われるが、特殊な装置にはそれに見合うテスターが必要ということである。
《技術相談窓口》
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