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2007年6月
スターターを正しく診断するには?
 エンジンがかからないということで当会に持ち込まれた、年式不明の三菱トッポBJ(GF-H42A、エンジン型式3G83、走行距離16万5千氏jについてのトラブル事例を紹介する。
  クランキングをしようとキースイッチをSTART位置にしても、「カチッ」と音がするだけでスターターが回転しない。
  キーON時の電圧を測定してみると、スタ−ターのB端子には12Vきていて、アースもしっかり取れているようにある。しかし、スターターは全く回らない。
  このようなときに、スターターの不良と判断してしまいがちになるのだが、もう一歩深く考えてほしい。
  スターターはキースイッチがSTART位置の時に、C端子〜プルインコイル〜M端子〜フィールドコイル〜アーマチュアコイル〜アースと電気が流れる。このときに「カチッ」と音がし、その結果、メーン接点が閉じ大電流がB端子〜メーン接点〜M端子〜フィールドコイル〜アーマチュアコイル〜アースヘと流れ、スターターが回転するようになっている。
  ここで注意しないといけないことは、E(ドロップ電圧)=I(電流)・R(抵抗)より、電流が増えればドロップする電圧は比例して上昇するということである。
  本来、大電流が流れている回路を点検する場合に、電流が少ししか流れていない状態で測定しても、接触不良のような不具合は発見することができない。
  このことを踏まえたうえで、キースイッチをSTART位置にしたとき、つまり、スターターモーターを作動させる回路が成立した時のB端子の電圧を測定したところ、電圧が1V以下になっていた。確認のため、バッテリーの+端子〜スターターモーターのB端子間で電圧を測定すると、11Vあった。これではスターターを回すことができない。
図1
腐食した端子
  不具合箇所を探してみたところ、バッテリー・ターミナルのかしめ部が錆びており、接触抵抗が増大していた。(図1参照)
  同じような事例で、エンジンがかからないということで当会に持ち込まれた平成10年式のスズキワゴンR(E−CT51S、エンジン型式F6A、走行距離8万4千氏jについてのトラブル事例も紹介する。
  依頼者の話から、キースイッチをSTART位置にしたときにスターターは作動するのだが、どうも回転が重いということであった。
  そこで、スターターが作動状態(クランキング中)で各電圧を測定してみたところ、アース電圧が3V近く検出された。これではスターターの性能を十分に引き出すことができず、クランキング時のエンジンの回転速度は上がらないため、回転が重いと感じるのも無理はない。

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