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2007年7月
曲げられてしまったリヤアクスル
 後輪タイヤの外側が異常摩耗するので、ホイール・アライメントの測定を依頼された、'03年式のマツダ・スピアーノ(UA-HF21S、 エンジン型式K6A、走行2万氏jのトラブル事例を紹介する。
  この車はスズキ・ラパンのOEMで、ホイール・アライメントのデータ等も同一である。
  車を見てみると、右後輪タイヤの摩耗が著しく、図1のように半分から外側はツルツルになっている。
  さっそくホイール・アライメント測定してみると、表に示すデータが得られた。
  やはり異常摩耗している右後輪のトーが大きく狂っている事がわかる。
  リヤサスペンションはリジットアクスル方式なので、当然のごとく調整機構は存在しない。
  過去において右後輪を激しくぶつけてしまったかなにかで過大な衝撃が加わったものと考えられる。
  測定を依頼してきた工場の担当者にこれまでの経緯を聞いてみると、数ヵ月前に右前の事故修理をしており、それから右後輪タイヤが異常摩耗するようになったという事が確認できた。
  右後部の事故なら前述の事が原因と考えられるが、右前部の事故でなぜ後輪が異常摩耗してしまうのだろうか。
  右前部の事故修理跡を見ると、サイドメンバーとインナーフェンダーまで入力があった事を物語る痕跡が残っていた。
  次にリヤアクスルに目をやると、図2に示すようなアクスル表面に傷が見られた。
  その一部は凹んでおり、アクスル全体を下から見ると後方に引かれる形で曲がっている。
  これで右後輪の異常摩耗の原因が判明した。
  右前部の事故修理をおこなう際に、変形したサイドメンバーを前方に引き出す必要があり、その時に車を固定する場所として選択したのが、リヤアクスルだった訳である。
  FR車のアクスルならまだしも、FF車のアクスルにそれほどの強度を期待するのは無理であり、ましてやボディとの間にスプリングやラバーブッシュを介在して取り付けている所を固定して引っ張る事はまちがいであり、サイドシル等を固定すべきである。
  まちがった方法で板金作業をしたために発生した二次故障的なトラブルであるが、これまでにも積載車に固定する際にタイダウン・フックではなく、アクスルに固定ワイヤを掛けたためにキャンバーが狂ってしまった事例も見ている。
  逆にタイダウン・フックをけん引フックと思って車をけん引している場面を目にするが、本来の使い方ではない事を再認識する必要がある。(次ページ参照)
《技術相談窓口》

図1
外側が異常摩耗してしまった右後輪タイヤ
図2-(1)
後方(写真画面の右側)に引かれるように曲がっているリヤアクスル
図2-(2)
リヤアクスル右側の前方方向に傷が付いており、一部は凹みがある。サイドメンバーを前方に引っ張って修整する時に、この部分にワイヤを掛けたものと思われる。
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