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2008年1月
O2センサは消耗品 (排気ガステスターの有効利用を)
 当会の予備テスター場で、排気ガス(CO・HC)が規制値を超えていて、車検にパスできない事例が散見されるので、その内容を紹介する。
  車はいずれも、平成10年アイドル規制適合車で、規制値はに示すとおりである。
  1台目は’00年式マークII(GF-GX100、エンジン型式1G-FE、走行距離11万km)で、排気ガスを測定するとCOは2%、HCは200ppmであった。
  HCは問題ないが、COだけが規制値を1%オーバーしているだけで、エンジンの調子も良く、エンジン警告灯が点灯する訳でもないので、予備テスター場に来て気がついた次第である。
  車のOBDカプラに外部診断器を接続してECUの制御データを調べると、空燃比補正がプラス20%まで増量されている事が判明した。
  その時のO2センサの信号電圧は、0〜0.2Vの間でしか変化していなかった。
  急激なレーシングをして、空燃比がリッチになる状態を作ってやっても信号電圧はほとんど変わらない事から、O2センサ自体の機能ダウンと思われる。
  センサの代わりに乾電池を接続して、ECUにリッチ信号を入力してやると、補正値がマイナス側に変化して、COが0.1%まで低下する事から、エンジン本体や制御系の不具合ではなく、O2センサ不良と判断できる。
  もう1台は、’00年式ミラ(GF-L700S、エンジン型式EF-SE、走行距離9万8千km)で、アイドリングが少しラフ気味になっており、COは6%でHCも650ppmと両方共規制値をオーバーしていた。
  車検整備の際の作業内容を尋ねてみると、タイミングベルトを交換した事がわかった。
  この時にバッテリー端子を外しておいた事で、ECUの学習値がクリアされてしまったものと考えられる。
  このエンジンは、吸入空気量の検出にエアフローメータや、バキュームセンサを用いないで、スロットル・ポジション・センサのみでおこなう「スピード・デンシティ方式」を採用しているので、このセンサの信号が燃料噴射量に大きく影響するので、バックアップ電源を長時間OFFしたり、ECUやセンサを交換した場合は、必ず初期学習をしなければならない。(学習操作要領は本誌2005年5月号に掲載)
  初期学習をおこなうとアイドリングが安定したので排気ガスを測定してみると、さきほどよりはCO・HC共に低下したが、COの3%は前述の規制値を少しオーバーしている。
  この車にもOBDカプラが設けられているが、ソフトの関係で外部診断器の通信ができなかったので、電圧計をO2センサに接続して調べてみると、ほとんど0Vのままで変化しなかった。
  前に説明した要領でリッチ信号を入力してやると、ほぼ0%近くまで低下するので、この車もO2センサ自体の故障と判断した。
  今回紹介した事例の場合は、これまでの車のようにO2センサのカプラを外したままにしたり、吸気系からエアを吸わせるというような、ごまかしの手法は通用しないので、正しく機能するO2センサに交換するしかない。
  ユーザーは何の不具合も感じないので気が付かないかもしれないが、空燃比補正が20%も増量したままで乗り続ければ、単純に考えても燃費は20%悪化したままになる訳だから、2万円強のセンサを交換しても、数ヵ月分のガソリン代で元を取り戻せる事を説明すれば、ユーザーも納得してくれると思う。
  現在のガソリン価格を考えれば、その説得力は大きいのではないだろうか。
  それにしても、予備テスター場に来る前に自工場の排気ガステスターで測定しておけば、お互いに無駄な手間が省けるのにと思えて仕方ない昨今である。
《技術相談窓口》
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