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2008年6月
口をすっぱくしても言いたい基本点検の重要性
 エンジンがかからないという、平成6年式インスパイア(車両型式 E-CC2、エンジン型式 G25A)のトラブル事例を紹介する。
  担当のメカニックに話を聞いてみると、クランキングするとプラグが湿ることから問題は点火系だと思い、イグナイタを新品に、ディストリビュータを中古に交換したが変化がないという。
  当会にて基本点検を行ったところ、ディストリビュータのセンターコード側では火花が飛んでいたが、プラグ側では火花が飛んでいなかった。
  ディストリビュータ部でのリークかと思い、ディストリビュータ・キャップや、ローターを調べたが、特にリークした様子もない。
  念のため、ローターの絶縁点検を行ってみたが、特に問題はなかった。
  絶縁がしっかりしているのになぜ火花が飛ばないのだろうかと不思議に思いながらも、まずは点火のタイミングを調べることにした。
  1番シリンダを圧縮上死点にしたときのローターの位置を確認してみようとしたところ、いくらクランクシャフトを回転させても、ローターが常に同じ位置にある。
  今度はクランクシャフトを回しながら、同時にローターの動きを見てみたところ、いくらクランクシャフトを回しても、ローターが一向に回転しない。
  ディストリビュータはカムシャフトで駆動されているため、シリンダヘッド・カバーを取り外し、カムシャフトの動きを調べたところ、クランクシャフトを回しても、2番シリンダ以降のカムシャフトが回転していなかった。
  カムシャフト・ベアリング・キャップを取り外しカムシャフトを調べると、なんと、2番シリンダの後ろあたりでカムシャフトが折れていた。(図参照
  これではいくらクランキングしても火花を各シリンダに分配できないし、3番シリンダ以降の吸・排気バルブも作動しないため、エンジンは始動しないはずである。
  シリンダヘッドやオイル・フィラー・キャップの裏側を見てみたところ、どうもエンジンオイルの管理がよくなく、オイルメンテナンス不良でカムシャフトが潤滑不良になったため焼き付き、最終的に折損したものと思われる。
  当会に持ち込む前に、基本点検である、燃料・火花・圧縮の3項目の点検をしっかりと行えば、あるいは原因に辿り着いていたかもしれないと考えると(今回の不具合では、3、4、5番シリンダに圧縮がない)、あらためて基本点検の重要性を認識させられた。
  めったに起こらないような珍しいトラブルではあったが、現実に起きていることをしっかりと受け止め、点検を行っていくと、必ず矛盾する部分が見えてくる。
  最近の自動車は大部分が電子制御になってきているが、電気的なトラブルというのは、実はそれほどまでに多くない。
  むしろ、不具合が発生しているときは機械的な原因のほうが多い。
  点検を行うときには電気的なトラブルを疑う前に、まずは基本点検を実施することが重要なのである。
《技術相談窓口》
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