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2009年4月
外部診断機でしか点検できない項目もある

 平成12年度排出ガス規制対象車以降の車(ガソリン・乗用車)には、ダイアグノーシスコネクタが備え付けられていることは周知のとおりである。
  このコネクタにいわゆる外部診断機と呼ばれる機器を接続すると、ダイアグノーシスコードを読み取ったり消去することができる。
  また、エンジンのコントロールユニット(ECU)のデーターを調べることもでき、中にはアクチュエータを強制的に動かすことができるアクティブ機能(燃料を増減させたり、リレーを強制的にON・OFFさせる機能)が付いているものもある。
  しかし、ダイアグノーシスの点検や異常コードの消去といったものは、外部診断機を使わずにできるメーカーも多くあり、また、ECUのデーターもサーキットテスタを使えば点検することも可能である。
  ただ、外部診断機でなければ点検できない項目もある。
  その項目のなかで、大事な項目である空燃比(空気と燃料の割合)の補正に関してのトラブル事例を紹介する。
  空燃比に関する項目は、補正値と学習値という2つの項目がある。
  簡単に言えば、補正値は今現在の補正状態を表し、学習値は今以前のトータルの補正状態を表している。
  また、補正値は学習値をベースとした値である。
  例えば、補正値が+10%、学習値が+20%とすると、基本の噴射量に対して過去の状態から20%増量しており、更に今現在は10%増量していることになる。つまり、基本の噴射量から30%の増量をしているということになる。
  また、これら補正値と学習値はO2センサー信号によって変化することを覚えておいていただきたい。

〔事例1〕
  アイドル回転が安定しないという平成14年式プレマシー(車両型式GF・CP8W、エンジン型式FP)
  外部診断機で空燃比の状態をモニターすると、学習値が+15%で補正値は0〜10%で変化していた。
  合計するとかなりプラス側に制御していた。これは逆にいえば空燃比が薄いということになる。
  簡単に点検できるエア吸いを点検すると、エアフロメータの後のダクトに亀裂がはいっていた。

〔事例2〕
  冷機時の吹き上がりが悪いという平成12年式セルシオ(車両型式UA-UCF31、エンジン型式3UZ)
  外部診断機で空燃比の状態をモニターすると、学習値と補正値を合わせたものがプラス30%前後とかなり増量していた。
  この数値と不具合現象から、空燃比が薄いことが推定された。
  空燃比が薄くなる要因である、エア吸い、エアフロメータ、燃圧を点検したが特に悪くはなかった。
  あとはインジェクタの詰まりくらいしかないので、外してインジェクタクリーナで清掃すると不具合現象は解消された。

〔事例3〕
  排気ガスが基準をオーバーするという平成16年式カローラ・フィールダー(車両型式NZE121G、エンジン型式1NZ)
  空燃比をモニターするとプラス20%近くになっていた。
  これはおかしい。COが7%ほど出ていたということは濃いはずでマイナス側(減量側)に制御しなければならない。それがプラス側(増量側)に制御している。
  この空燃比の制御はO2センサーの信号を基に制御しているので、O2センサーの信号をモニターするとほぼ0Vのままだった。
  O2センサーは理論空燃比より薄い場合、0.5Vより小さい電圧を出し、濃いと0.5Vより大きい電圧を出す特性がある。
  本当に濃いのであれば0.5Vより大きい電圧でないといけないはずである。それが逆に薄いという0Vの信号を出力していた。
  エンジンのECUはこの薄いという間違った電圧を基に増量していたのである。
  O2センサーを交換すると、検査に合格するレベルに下がった。

 学習値と補正値を合わせた数値が±10%を超える場合は正常とは言えず、これが20%を超える場合は何らかの不具合現象が出るようである。
  燃料系が正常かどうかは、この空燃比の状態をモニターすると一目で判断できるが、外部診断機を使わないと点検できない項目でもある。
  このように外部診断機は非常に便利であり、特に2008年にはJ-OBD-II規制が施行されたので、外部診断機の必要性が増すのではないだろうか。

 
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