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2010年10月
問診の重要性

エンジンが2気筒死んでいるという、平成7年式セドリック(車両型式E-HY33、エンジン型式VQ30)のトラブル事例を紹介する。

左バンクの前から2番目(4番シリンダ)と3番目(6番シリンダ)が失火しているようで、プラグと点火コイルと交換したが直らないという。

不具合が発生した経緯を聞いてみると、オイル漏れの修理で左右バンクのタペットカバーを交換してから調子が悪く、入庫した際にユーザーから「最近少し力がなくなったようだ」と言われていたが、先にオイル漏れを修理したところ、いよいよ2気筒死んでしまったとのこと。

先方にて交換したコイルは全数新品で、スパークプラグは左バンクの3本のみ新品に交換。また、圧縮圧力を確認しており、全気筒12kgf/cm2で問題は無いようにあったという話も聞けた。

しかしながら、当会では基本点検が実施されている車両であっても、必ず基本点検を実施し再確認するようにしているため、燃圧・圧縮・点火火花を点検したが良好であった。

以上の事から、本来であれば点火信号やインジェクタの駆動信号をオシロスコープにて測定する作業に入るのだが、不具合が作業実施後からひどくなっているということに注目し、作業で脱着するであろう部品を確認していったところ、エンジンのアースボルトが緩んでいることが判明した。

すぐにボルトを増し締めしてみたが変化が無かったことから、更に調べてみると、何と4番シリンダと6番シリンダのイグニッション・コイルのカプラが入れ替わっていた。(図1)

左バンクのイグニッション・コイルのカプラを全て取り外してみると、4番シリンダのイグニッション・コイルに取り付けるカプラの配線の長さが、6番シリンダのイグニッション・コイルに取り付けるカプラの配線の長さよりも長くなっており、長さでカプラ取り付けるシリンダを判断したものと思われる。(図2)

こういった事態を想定していたのか、配線のカバーには取り付けるべきイグニッション・コイルのシリンダ番号が記載されていたが、気が付かなかったようだ。

当会に寄せられる技術相談の中で、何らかの作業実施後から発生する不具合や、原因が特定できた後に、「そういえば○○○(原因に関連する部品)を脱着(整備)した」という話を聞くことがあるが、これらの原因は作られたトラブルであることがほとんどで、たまたま自然に発生したトラブルが重なったという事例はほとんど無い。

今回は問診の段階で「作業実施後から不具合が酷くなった」ということを聞きだすことができていたので早期に原因が特定できたが、ただ「2気筒死んでいて調子が悪い」としか聞いていなければ、大きな回り道をしていたかもしれない。

あらためて問診の重要性を認識させられた一件であったが、筆者も含め、作業ミスを疑い自分の行った作業を再確認しても、なかなかミスには気が付きにくい。

しかしながら、現実に起きていることをしっかりと受け止めることで、点検する部位は限られてくる。

ユーザーからトラブル車を預かった際にも、詳しく問診を実施することで不具合の特定に大きく役立つことも少なくない。

忙しいときなどには特に問診は省略されがちであるが、問診を怠ったがために回り道をしては元も子もない。

問診はトラブルシュートを行う上で非常に重要なことなのである。


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