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2011年6月
余計な事をしたのがトラブルの原因

ラジエーターを冷却する電動ファンは正常に作動するが、水温計の指針は「C」の少し上までしか上がらないという1997年式のワゴンR(E-CT21S、エンジン型式K6A、走行距離9万km)のトラブル事例。

相談を持ちかけてきた整備工場では、水温計のセンダーゲージに接続されている回路を直接アースすると、指針が「H」まで上がることからレシーバーユニット(メーター側)には問題なく、センダーゲージの不良との判断でその部品を交換したが、治らないという経緯である。

ラジエーターを触った感じでは十分に温度は上がっており、クーリング・ファンの作動は問題なく、水温計の表示だけが狂っていると考えられる。

センダーゲージの抵抗値を測定してみると200Ω 以上で、特性図から読み取ると40℃相当だった。

やはりセンダーゲージの不良ということになるが、前述したように部品は既に新品と交換済みである。

センダーゲージは図2に示すように、単独ではなくEPI システムの水温センサと一体構造になっている。

クーリング・ファンの制御は水温センサの信号によって、EPI/ECM がクーリング・ファン・リレーを駆動することによっておこなっている。(図1)

したがって、温度検出回路には問題はないということになる。

一体構造になっている水温センサ&センダーゲージの、片方のみの検出温度が異なるということは考えられないので整備マニュアルで調べたところ、図2のようにそれぞれの回路のアースは別々であることが判明した。

しかもセンダーゲージ側のアースは配線によるものではなく、センサ本体でグランドする構造になっている。

図2に示す配線図のアース記号の違いがそれを表すものである。

先ほどセンダーゲージの抵抗を測定した際は、バッテリーのマイナス端子との導通テストだったので、センダーゲージ本体との間で測定してみると、前述した値よりはるかに小さい30Ω であった。

念のためにセンダーゲージ本体の金属部分とシリンダ・ヘッド間の抵抗値は150Ω であった。

一体式水温センサを取り外してみると、ネジの部分に大量の液状ガスケットが塗られていた。(図3)

これによって接触不良が発生したのが、今回のトラブルの犯人である。

水漏れを心配して液状ガスケットを塗ったのであろうが、ちゃんとしたO リングがその役目をするようになっているのだから、余計なことはしなくてよいのだ。

気を利かせたつもりが、却ってアダになってしまった訳である。

液体ガスケットを除去して組み付けると、水温計の指針がほぼ真ん中を指すようになった。


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