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2011年11月
厄介なショートトラブル

[事例1]

時々「ECCS 10A ヒューズ」が切れるという、平成13年式シーマ(車両型式TA―GF50、エンジン型式VK45)のトラブル事例を紹介する。

頻度は低く、数か月に一度切れる程度。

ECCS 10A ヒューズの下流には図1のような負荷がぶら下がっているため、ヒューズが切れるとエンジンが始動できなくなるという。

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ヒューズを入れてもすぐに切れる場合に関しては、ヒューズ部分に電流計をセットし、ヒューズ負荷のコネクタを外していき、電流値が大幅に低下したコネクタの下流がショートしていると判断できるが、時々ヒューズが切れるという場合についてはそうはいかない。

対処方法としては、ヒューズ負荷にそれぞれ新たなヒューズを割り込ませ、次にヒューズが切れた時にどの回路のヒューズが切れたかを確認するしかない。

今回も図2に示すように、新しいヒューズを取り付け、様子を見るようにしたが、1ヵ月以上たった今でも連絡がないことから、トラブルがなかなか再発しないのだと思われる。

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[事例2]

エンジン警告灯が点灯し、スピードメーターが動かず、変速ショックが大きいという、平成14年式マックス(車両型式LA―L950S、エンジン型式EF―DET)のトラブル事例を紹介する。

「52」(車速センサ信号系統異常)と「82」(A/T ECU 通信系異常)を出力するという。

A/T ECU の内部回路が焼損しており中古に交換したが、1週間ほどで再発してしまったので調べてほしいとのこと。

今回もA/T ECU の内部が焼損しており、焼損箇所も同じであった。

焼損している回路を調べると、A/T のタービン回転センサとアウトプット回転センサの電源端子であった。

センサの単体点検を行ってもショートしておらず、配線にも問題がなかったことから、特定の条件下で回転センサのいずれかがショートし、過電流でA/T ECU 内の基盤が焼損するものと推測。

回転信号が入らなくなるため、スピードメーターが動かず、また、変速制御とライン圧制御もできなくなるため、変速ショックが大きくなっていたもの。

A/T ECU と各回転センサを交換して不具合は再発しなくなったのだが、こちらのトラブルも不具合箇所を完全に特定するのであれば、各回転センサの電源線にヒューズを割り込ませ、次に不具合が発生した時にどちらのヒューズが切れたかを確認する必要がある。

今回はショートした回路の負荷は2つで、比較的高価な部品ではなかったため、2つの回転センサを交換したのだが、事例1のように、ヒューズ負荷がたくさんあり、高価な部品が多い場合にはそんなわけにはいかない。

近年、「○○ヒューズがたまに切れるのだが、どこが悪いのか?」というような、答えのみを求める問い合わせが増えてきているが、前途のように、そのような不具合を特定するのは容易ではない。

確かに、ショートする可能性の高いアクチュエータも存在するが、あくまでも可能性として他の回路よりも高いというだけである。

「時々ヒューズが切れる」というトラブルほど厄介なものはなく、そのような原因で入庫した場合には長期戦になる覚悟を決めないといけないし、配線を切ってヒューズを割り込ませるという大変な作業を行う手間もかかるという認識も持たなければならない。

「○○のトラブル=○○センサ不良」というような数学みたいな公式は自動車には存在しない。


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