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2014年4月
A/Tを交換しても治らなかった セレク卜・ショック過大

A/Tのセレクトレバーを、走行レンジに入れたときのショックが大きいという、1993年式のクラウン(E-JZS143、エンジン型式2JZ、走行距離18万km)のトラブル事例。

すでにトランスミッションを交換しているとのことだが、交換しても一向に改善されていない状況である。

NレンジからDレンジおよびRレンジに入れたときの、「セレクト・ショック」が非常に大きいことが確認できた。

走行して変速の様子を確認してみると、ほぼ問題ない車速でシフトアップするが、変速時のショックも大きい。

ここまでの点検で、ライン圧力が高過ぎるのが原因と思われる。

トランスミッションの型式は「A350E」で、この年式のトヨタ車では一般的であるスロットル・ケーブルによる機械的なライン圧制御ではなく、ソレノイド・バルブを電気的に制御する方式が採られている。(図1参照)

「O/D・OFF」のインジケータランプが点滅していないので、制御系に異常はないと判断したが、念のために確認したところ、「77」の異常コードを表示した。

さっそく整備マニュアルで調べてみると、ライン圧ソレノイド系異常であることがわかった。

異常があるのに、なぜ前述のインジケータランプが点滅しないのかと疑問に思い、さらに調べるとライン圧ソレノイド系が故障しても、インジケータランプはそのことをユーザーには知らせないロジックになっていた。(図2参照)

相談者も同じように判断したらしく、ダイアグコードの点検をしていなかったらしい。

制御の様子を調べてみると、ソレノイドには全く通電されていなかった。(図3参照)

ソレノイド単体の抵抗値や、ECUまでの配線に断線や地絡がないことから、不具合はECU内部で起きていると考えられる。

ECUの内部を点検してみると、基板上のコンデンサから漏れた液で、プリント配線が腐食していた。

この時期のトヨタ車のECUでは、比較的多くみられることであるが、ほとんどがエンジン始動不能につながる事が通常で、今回のようにA/Tに不具合現象がでることはめずらしい。

ECUを交換すると、セレクト・ショックは収まった。

トラブルシューティングをおこなう場合、不具合が起きている物が原因のように思いがちであるが、それらの制御がどうなっているかを確かめたうえで診断を進めないと、まちがった方向に行ってしまうので、気をつけなければならない。

《技術相談窓口》

 

@ ライン油圧制御

・従来のカムとスロットルバルブからリニアソレノイドバルブを用いて電子制御式に置き替えています。

・エンジン制御用コンピューターからのスロットル開度信号により、トランスミッション制御用コンピューターはリニアソレノイドバルブを作動させ、スロットル油圧を調圧します。その結果、プライマリーレギュレーターバルブによりライン油圧をエンジン出力に対応して高精度に・きめ細かく制御することができ、より滑らかな変速特性とすることができます。


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