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2014年12月
思いもよらないユーザーの行動

@冷機時始動直後に白煙が出て、アイドリングが不安定。また、アクセルを踏み込んでも一瞬遅れて吹け上がるという、平成18年式キャリィトラック(車両型式EBD-DA63T、エンジン型式K6A)のトラブル事例を紹介する。

スパークプラグを調べると、先端が真っ黒に湿っていた。

スパークプラグを取り外してしばらく放置していても全く乾く感じがなかったため、燃料を調べてみた。

正常なガソリンと、車両から抜き取ったガソリンを同時に指に付け、乾き具合を比較してみたところ、車両から抜き取ったガソリンは乾くスピードが遅く、オイル分による光沢が確認された。

このことから燃料にガソリン以外のものが混入していると判断し、燃料を交換したところ、不具合は解消された。

 

A冷機時の始動性が非常に悪く、暖機後はノッキング音が大きいという、平成14年式マーチ(車両型式UA-AK12、エンジン型式CR12)のトラブル事例を紹介する。

アイドル回転時のVTC 角度が-10°前後だったため、タイミングチェーンの伸びを疑い交換したが改善されず、燃料ポンプ、吸気圧力センサ、吸気マニホールドのガスケットを交換してみたが、症状の改善がみられないという。

当会に入庫した際、「なんとなく症状が改善されてきたような気がする」とのことだったので、直前の行動を問診したところ、燃料を補充したとのこと。

 

事例@と同じ方法でガソリンを点検してみると、事例@と同じ結果が得られた。

よって、ガソリンを全て入れ替えると不具合は解消された。

車業界に携わる者は、ガソリンエンジンにはガソリンを入れ、ディーゼルエンジンには軽油を入れることは常識である。

ところが、車に詳しくないユーザーは、セルフスタンドを初めて利用するようなときに、軽自動車の「軽」は軽油の「軽」と同じだから、値段の安い軽油を入れるなんていうことがある。

 

今回の事例@Aのユーザーが何故軽油を入れたのかは不明だが、我々の考えもしないことを行った結果、不可解なトラブルに発展していた。

このようなトラブルの際に先入観を持っていると、結論にたどりつけなくなってしまう。

車が「ただの移動手段」とみられる傾向が強くなっている今、絶対数は少ないかもしれないが、思いもよらない使用方法によるトラブルが増えてくるのではないだろうか。

柔軟な思考回路とユーザーヘの問診が重要だと感じた事例であった。

《技術相談窓口》


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