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2016年6月
ワイパーのオート・ストップが効かない

ワイパーが、「間欠」と「低速(Lo)」で動かず、「高速(Hi)」でのみ動くが、ワイパースイッチを切ると、ワイパー・ブレードがどこででも停止してしまうという、2009年式のプリウス(DAA-ZVW30、エンジン&モーター型式2ZR/P410、走行距離23万km)のトラブル事例を紹介する。

ハイブリッドカーであっても、このような装置は通常の車のものとなんら変わりはないのだが、ついつい尻込みしてしまいそうなので、あえて採り上げてみた。

回路は図に示すとおりであるが、最近の車に共通している点は、間欠作動用のタイマー装置が単独で存在するのではなく、ワイパーのスイッチや他のものも集中制御するユニットに組み込まれることが多い。

この車の場合は、ワイパーのスイッチ内に組み込まれている。

さっそくモーター部分の端子で電圧を測定してみると、「間欠」と「低速(Lo)」の時に作用する回路には通電されていた。

正常に作動する「高速(Hi)」用の端子にも、当然のことながら通電されていた。

アース回路は共用なので、問題ないと判断した。

ここまでの点検でわかったことは、ワイパースイッチとモーターまでの配線回路には問題ないということである。

そうなると、モーター自体の故障と判断できる。

ワイパー・リンクとモーターを一体で取り外し、モーター単体にして通電テストを行ってみると、ぎこちなく少しだけ回転して、ほどなく停止してしまった。

モーターの分解はおこなわなかったが、考えられるのはブラシの摩耗によるものと思われる。

年間走行距離が約4万km 弱で、7年間使用した間の雨天走行時に使うワイパーの速度は、圧倒的に「低速(Lo)」が多いと思われるので、どうしてもその回路のブラシが摩耗してしまう。

ワイパースイッチを切った時に、必ずワイパー・ブレードがガラスの下端で停止する仕組み(オート・ストップ)は、モーター内部のカム接点とワイパースイッチOFF 位置で導通する回路によって、「低速(Lo)」側の回路が成立するからである。

したがって、「低速(Lo)」回路に異常があると、オート・ストップ機能が効かなくなってしまう。

ワイパー・モーターを交換すると、すべて正常に作動するようになった。

《技術相談窓口》


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