実践!整備事例一覧 > 整備事例  

Page 1
2017年3月
EGR 系統のトラブルシュートは難しい

走行中にエンジンチェックランプが点灯し「0302」(電制EGR コントロールバルブ系統異常)を出力するという、平成18年式キャラバン(車両型式KRVWE25、エンジン型式ZD30)のトラブル事例を紹介する。

問診したところ、EGR コントロールバルブを交換しEGR 通路も清掃したのだが、それでも不具合が改善されないという。

修理書によれば、「0302」のDTC はEGR コントロールバルブの電気的なトラブルというよりも、作動不良等の機械的なトラブルで検出するというようなことが記載されていた。

実はこの「作動不良」というのが厄介なのである。

この車両は、ECU がEGR の作動状況を確認するための手段としてエアフローメータの信号を利用しているのだが、本紙2012年10月号で紹介したマツダ・トリビュートでは、EGR 配管の途中にオリフィスを設け、その前後の圧力差をモニタするという方法をとっている。

また、温度センサを使用するタイプもある。

このように何らかの形で、EGR の作動状況を確認しているのだが、「EGR バルブの電気的な故障」というDTC ではなく、今回のように「作動不良」となると、EGR バルブが動いていないケース、EGR 配管が詰まっているケース、それらの状況を確認するセンサが壊れているケースのそれぞれを考えなければならない。

EGR 関係のDTC が出力された場合、まずはEGR バルブ及び通路の清掃を勧めているが、それでも改善されない場合は、関連システムを点検しなければならないということを頭に入れておく必要がある。

今回のキャラバンは結論から言うとエアフローメータの不良であったのだが、システムを理解しておかないと、エアフローメータにたどりつくことができない。

各種チェックランプが点灯しDTC が検出された場合、すぐに表示されたセンサ、アクチュエータを交換するメカニックが多いが、近年の電子制御化された車は、様々なセンサが複雑に関係している。

トラブルシュートをおこなう際は解説書でシステムを理解し、修理書で点検要領を確認するという習慣をつけることをお勧めしたい。最後に、参考として今回の車両のメカニズムを説明するが、解説書や修理書にはその内容が記載されていなかった。

このため、当会技術相談窓口の推測が含まれることをご留意願いたい。

《技術相談窓口》

エアフローメータを使用したEGR システムの異常検出のメカニズム

例えば、エンジン回転が1000回転で一定の時のエアフローメータを通過する空気量を1000とする。

(数値はあくまでも例)

エンジン回転が1000回転から変化しない状態でEGR が作動したときには、エアフローメータを通過しない排気ガスが排気管からインテークマニホールドヘ流入するため、エアフローメータを通過する空気がその分減少する。

シリンダーに吸入される気体の割合を表す(数値はあくまでも例)と、

EGR 非作動(図1)……エアフローメータを通過してくる空気1000

EGR 作動中(図2)……エアフローメータを通過してくる空気800、流入する排気ガス200

という具合に、同じエンジン回転でもエアフローメータからの信号が変化することになる。

この変化量をECU が計算し、EGR が作動しているかどうかを判断している。

したがって、エアフローメータが特性ズレを起こしてしまうと、EGR の作動にも影響を与えてしまうというもの。


実践!整備事例一覧 > 整備事例
UP