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2017年7月
部品交換しても消えないSRS 警告灯

今年の2月から、継続検査を受ける際に「審査時における車両状態」について具体的な規定が示され、図1に記すテルテールの識別表示ランプが継続して点灯または点滅していないことが、受検の条件になった。

今回のトラブル事例は、それに関するものである。

平成12年式のワゴンR(GF-MC11S、エンジン型式F6A、走行距離13万q)で、SRS 警告灯が点灯したままになっており、ダイアグ・コード「B1042」(運転席シートベルト・プリテンショナ回路の抵抗値が低い)を表示したので、迷うことなく運転席側のシートベルトAssyを新品に交換してみたが直らず、SRSコントローラー(コンピューター)をも交換した結果も改善されず、当方に持ち込まれてきた。

SRS コントローラーが、運転席シートベルト・プリテンショナ回路の抵抗が小さいと認識しているという事は、ほぼ短絡状態にあると考えられる。

交換した両方の部品のコネクタを外した状態にして、2本の配線の絶縁を測定すれば良いのだが、システムをうまく活用しプリテンショナ側のコネクタだけを外したままにして、イグニッション・スイッチをON にした時のダイアグ・コードを調べれば、回路の点検が可能である。

その結果、ダイアグ・コード「B1041」(運転席シートベルト・プリテンショナ回路の抵抗値が高い)を表示した。

この結果から、配線には問題が無いと判断できる。

そうなると、交換した新品のシートベルトAssy が疑わしい事になる。

ここでSRS の装置について改めて考える必要がある。

配線は黄色いチューブで覆われて、コネクタは二重ロック構造になっているのは周知の事である。

センターピラー下側のコネクタを見ると、その構造の一部に問題があることが判明した。

プリテンショナなどのインフレータ(火薬による爆発装置)の端子は、コネクタを外した場合に、端子が開放状態になっていると、静電気によって誤爆するおそれがある。

それを防ぐために、端子同士を短絡する仕組みになっている。

図2にその構造を示すが、二重ロックのレバーを起こした時点で短絡される訳であるが、この部分のコネクタにはそれが無いのだ。

したがってプリテンショナ回路は常に短絡状態にあるために、前述のダイアグ・コードを表示したのである。

センターピラー部には板金塗装の修復歴があり、過去の修理の際に欠落したものと推測する。

構造をしっかりと理解したうえで作業しないと、せっかくの安全装置がなんの役にも立たなくなってしまう。

車輌ハーネスを交換するのが本来の処置であるが、車の年式などを考慮してそれに代わる細工を施して、SRS 警告灯が消灯する事を確認した。

《技術相談窓口》


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