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2017年10月
五感を駆使した故障診断

坂道を登る際に、以前よりパワーがなくなったという、平成21年式のタント(CBA-L375S、エンジン型式KFDET、走行距離12万km)の事例を紹介する。

この車のユーザーはワンオーナーの女性で、毎日同じ道路を走っていて前述の異変を訴えてきた次第。

診断を持ちかけてきた工場の話では、MIL(エンジン警告灯)の点灯は無く、DTC(ダイアグ・トラブル・コード)も異常を検出していないとのことである。

ユーザーの訴えを更に詳しく聞いてみると、登り坂を走行する時に、これまでは聞こえなかった音がするということがわかった。

その音は「シュー」というように連続して発生するもので、アクセルペダルを踏むにつれて大きくなり、ペダルを戻すと音は小さくなるらしい。

これはトラブル・シュートを行う上では、非常に大きなヒントである。

走行状態を再現させるために、車をしっかりブレーキングしてから、ストール・テスト時のターボチャージャーの過給圧をモニターしてみると、規定圧力を大幅に下回っていた。

それと同時にユーザーが指摘する「シュー」という音が、エンジンルームから出ていることが確認できた。

同じ状況を作って音の出所を探ってみると、インテーク・マニホールドの一部から吹き出す強烈な風を手に感じた。

インテーク・マニホールドを取り外して調べてみると、図に示す部分の接合が甘く、内部の圧力が高まった時に漏洩したものと考える。

亀裂があれば、大気を吸い込んでアイドル不調になるはずだが、それが無いことからも部品の構造的な要因と推測する。

これまでに事故を起こしたことも無い点を考慮すると、その可能性が高まる。

燃費至上主義の車を造らなければならいために、軽量化による金属部品の樹脂化が進んでいるが、経年変化による影響を考慮した耐久性についても、万全を期していただきたいものである。

《技術相談窓口》


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