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2017年11月
LPG のプラグが一日でくすぶる?

走行中にエンジンチェックランプが点灯し吹け上がりが悪くなるという、平成22年式トヨタコンフォート(車両型式DBA-TSS11、エンジン型式1TR、402,156km走行)のトラブル事例を紹介する。

ディーラーに修理を依頼し1番と3番のイグニッションコイルとスパークプラグを全数交換したが改善されず入庫したらしい。

依頼工場で念のためにもう一度スパークプラグを全数交換したが変化がないとのこと。

外部診断機にてダイアグノーシスコードを確認したところ、「PO351」(イグナイタ系統1)「PO353」(イグナイタ系統3)を出力していた。

まずは3番シリンダのIGt(点火指示信号)とIGf(点火確認信号)を、DTCを検出しないシリンダである2番シリンダと比較してみた。(図1参照)

その結果、3番シリンダのIGf の波形が正常ではないことがわかった。(3番シリンダのIGtが出力されていない部分があるが、うまく波形がとらえられなかっただけで問題はないことを確認)失火が原因と思われたため、スパークプラグを点検すると、図2のように完全にくすぶっていた。

液噴タイプのLPG とはいえ、LPGエンジンのスパークプラグが一日で図のようにくすぶるとは考えられないため、何かリコール等が出ているのではないかと思い調べてみた。

その結果、シリンダヘッドガスケットに関するサービスキャンペーンが出ており、内容としては「シリンダ内に冷却水が漏れる恐れがある」というものであった。

既にサービスキャンペーンは実施済みであったが、このトラブルであればLPGエンジンのスパークプラグがくすぶることにも合点がいくと考え、ラジエータキャップテスタで冷却水に圧力をかけてみた。

同時に3番シリンダのイグニッションコイルとスパークプラグを取り外し、スパークプラグの穴からピストン頂部が見える状態に観察をしていたところ、ピストン頂部がすぐに冷却水で濡れてきた。(1番シリンダも3番シリンダ程ではないがピストン頂部が湿っていた)

このことから、シリンダヘッドガスケットもしくはシリンダヘッドの不良と判断。

サービスキャンペーンは既に実施済みではあったが、不具合内容が同じであるため、ディーラーに相談して修理を行うよう説明し作業を終えた。

シリンダヘッドガスケット及びシリンダヘッドの不良による、シリンダ内に冷却水が漏れるという不具合が原因のトラブルは、多くはないが相談を受ける。

その症状の多くは、エンジン始動直後の数秒のみ失火が発生し、すぐにその症状が治まってしまうというものであった。

今回のように常に不具合が発生している状況は初めてであったので、答えにいきつくまで少し時間がかかってしまった。

燃焼室内に冷却水が入るという発想にはなかなか至らないことが多いが、そのようなトラブルも発生しうるということを是非知っておいて欲しいと思った事例であった。

《技術相談窓口》


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