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2018年4月
便利な失火カウンタ

エンジン警告灯とプリクラッシュセーフティシステム警告灯が点灯するという平成25年式ミライース(LA300S、KF)のトラブル事例を紹介する。

エンジン警告灯が点灯しているという事で、まずはダイアグノーシスを調べると、エンジンがP1399(イオン電流システム異常)、プリクラッシュセーフティシステムはC1A40(EFI・ECU異常)を記憶していた。

エンジンに異常があったためにプリクラッシュセーフティシステムを停止させ、警告灯を点灯させているようだった。

よって、プリクラッシュセーフティシステム自体に不具合があるわけではないので、エンジン側が正常になれば問題ないはずである。

エンジン側だけの問題なので、まずはデータモニターを調べると、項目の中に失火カウンタ項目があり3番シリンダのカウントがすごい勢いで増えていた。(図1参照)

しかし、失火カウンタは増えているが、エンジンの調子は良いので、実際に失火しているのではないようだった。一般的な失火検出はクランク角センサーの回転変動で推定しており、この場合は、ダイアグノーシスコードP030#(P0301が1番シリンダ、P0302が2番シリンダの失火)で表示される場合もある。

ダイアグコード表を調べると、このエンジンにもP030#系のダイアグコードがあるのだが、その異常コードは記憶していなかった。

よって、この失火カウンタは実際の失火ではなく、イオン電流燃焼制御システムによる失火カウンタのようである。

イオン電流燃焼制御システムについては、昨年8月号でも紹介しているが、火花が飛んで正常な燃焼が起これば、スパークプラグの電極部でイオンが発生し、回路にイオン電流が流れれば正常な燃焼が行われたと判断する。

しかし、失火が起こると発生するイオンが少なくなり、基準値以下では失火と判断するシステムである。(図2参照)

なんらかの理由で燃焼が正常に行われなくなると、その信号が正しく出力されなくなることで、前述のDTCが検出される訳である。

よって、このコードが記憶しているとなると、失火が原因なので点火系、燃料系、エンジン本体と様々なことが考えられるが、エンジンの調子からは実際には失火していないので、考えられる原因はイオン電流燃焼制御システムの構成部品であるIGコイルかプラグである。

どちらが原因かを調べるために、3番のプラグを1番と、IGコイルは2番と入れ替えてみた。

すると失火カウンタは2番が増えていった。原因はIGコイルであった。

昨年8月号の事例では、プラグが仕様違いのもの(NAなのにターボ用)を使ったことにより、実際の失火は無かったが、チェックエンジンランプが点灯した。

今回も実際の失火はなかったが、IGコイル不良により失火を検出していた。実際に失火が起こっていれば、パワーバランステストにより、何番シリンダが失火しているかはすぐに判断できるが、今回のように実際に失火がない場合は、不具合箇所のシリンダの特定が不可能である。

しかし、この失火カウントを調べることですぐにわかるので、失火カウンタがあれば活用してもらいたい。

参考までに、イオン電流検出回路の信号と点火指示信号の波形を調べてみた。通常、点火指示信号の立ち下り後に点火が行われるのだが、この部分が正しく燃焼が行われたことを示す部位と思われる。(図3参照)

正常なシリンダでは、約8msの立ち下り信号になっているが、不具合のあったシリンダでは、その立ち下り信号がほとんどなかった。(図4参照)

この立ち下り部がないことにより、エンジンECUは失火と判断したようである。

《技術相談窓口》


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