実践!整備事例一覧 > 整備事例  

Page 1
2020年3月
ECU不良と判断する前に必要な点検

エンジン始動不能の平成20年式クラウン(車両型式GRS182、エンジン型式3GR-FSE)のトラブル事例を紹介する。

相談者の工場でも既に調べており、どうもECUが不良ではないかとの結論になったのだが、念のためにと相談の電話をくれたようである。

ECU不良と判断した理由を聞くと、キーONでエンジン警告灯が不灯で、スキャンツールとの通信が出来ない。また、冷機時にも関わらずキーONで電動ファンが回ったり、燃料ポンプ(燃料タンク内の低圧ポンプ)の電源が供給されていないことが理由とのこと。

ただし、朝一番、エンジン警告灯は点灯しており、スキャンツールとの通信もできるのだが、一度、クランキングすると、その後は前述の症状になるという。

確かに、キーONでエンジン警告灯が不灯だったり、スキャンツールとの通信が出来ない場合は、ECU不良の可能性が高い。

しかし、その場合はECUの電源やアースが問題ないことを点検する必要がある。

そのことを相談者に言うと、すでに点検しており問題なかったのでECU不良ではないかと判断したようである。

そうであればECU不良と判断しても不思議ではないのだが、実はもう1つ点検しなければいけない箇所があるのである。

それはECU内の5V安定化電源回路であり、Vc電源ともいわれている。(図1)

このVc電源は何をしているかというと、ECU内のマイコンやメモリなどを動かす電源になっており、また、センサーの電源にもなっていることもある。

よって、センサーの電源になっているVc電源回路がアースとショート(地絡)すると、それにつながっているECU内のマイコンの5V安定化電源も0VになりECUが作動しなくなるのである。

ただし、中にはマイコンとセンサーと別々の5V安定化電源回路を持っているECUもあり、その場合は、センサー側の5V安定化電源回路がショートしてもECUの作動には影響は出ない車種もあるようである。

そこで、この車のVc電源を配線図で調べてみると、左右バンクのカムポジションセンサーとフューエルプレッシャーセンサーの電源になっていることがわかった。(図2)

仮に、Vc電源回路が地絡していた場合、クランキング後に不具合が出るということを考えると、怪しいのはフューエルプレッシャーセンサーである。

これは、過去にも似たような事例があり、クランキングで燃圧が上がることにより、センサー内部でショートが起こるようである。

そして、しばらくすると燃圧が下がり、ショートがなくなるのである。

相談者には、フューエルプレッシャーセンサーのVc端子電圧を測定するか、コネクタを抜いてみるよう説明した。

しばらくして電話があり、コネクタを抜くと、エンジン警告灯が点灯し、それまで通信できなかったスキャンツールが通信できるようになったそうである。

やはり、センサー内部でのショートだったようである。

ちなみに、センサー単体の設定はないと思われるので、デリバリパイプASSYでの交換が必要である。

《技術相談窓口》


実践!整備事例一覧 > 整備事例
UP