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2022年4月
時々エンジンがかからなくなる

エンジンがかからなくなることがあるという、平成23年式キャンター(車両型式SKG-FBA00、エンジン型式4P10)のトラブル事例を紹介する。

出先で始動不能になり、しばらくするとエンジンが始動できたためそのまま帰ってきたのだが、再び始動不能になったそうだ。

しかし、車を引き取りに行くとエンジンは始動できるようになっており、不具合がうまく再現しない。

DTCは「520500」(レール圧低い)を記憶しているので、燃料系統のトラブルと思うのだが調べてほしいという依頼。

車両が持ち込まれたときにちょうど不具合が発生していたのだが、DTCの確認やデータモニタ及び、低圧側燃料ポンプの電圧確認を行っている最中に不具合は治まってしまった。

しかし、この点検で低圧側燃料ポンプの電源及びアースは正常で、不具合時のレールプレッシャーが、低圧側燃料ポンプ作動時(キーON後、数秒間作動する間)に650〜900kpaということが分かった。

正常に始動できるようになったあとに同条件下でレールプレッシャーを確認すると、900〜1140kpaであった。

この時点で低圧側燃料ポンプのトラブルと絞り込み、再度、不具合の再現に備えた。

その後の点検で、不具合時には低圧側燃料ポンプの作動音がしないことも判明したため、燃料ポンプの単体を調べようとしたところ、写真のような状況が確認できた。

低圧側燃料ポンプのオス端子が一部焼けており、端子が傾いていたうえに、ワイヤハーネス側のメス側コネクタも一部が溶けて端子の圧着がスカスカになっていた。

この部分で接触不良が発生し、低圧側燃料ポンプに正常な電圧がかからなくなったために作動不良を引き起こしていたものと推測された。

なお、事前に調べた低圧側燃料ポンプの電源・アースの電圧は、メス側コネクタの後方側(配線側)から細い針を刺して測定していたため、コネクタの嵌合部分での接触不良については判別ができない。

原因は判明したのが、修理するとなると燃料ポンプの交換に加え、ワイヤハーネス側のコネクタも交換する必要がある。

コネクタのリペアキットがあれば良いのだが、設定が無ければワイヤハーネスの交換となってしまう。

コネクタを取り払ってしまい、配線をハンダでつないでしまうという方法も取れなくはないが、その方法は当会としてはお勧めできない。

したがって、原因の説明をした上で修理は依頼工場に任せることで相談を終えた。

これは後になって分かったことだが、実はこのトラブルは少なからず発生しているようで、振興会会員工場の中でも同じ経験をしたという工場が複数あることが確認できた。

また、インターネット上の情報でも同様の事例が散見されることから、この車特有のトラブルなのかもしれない。

もし今後同じキャンターでエンジンがかからないという修理依頼を受けることがあれば、本誌を参照して、まずは低圧側燃料ポンプのコネクタ部を確認してみて欲しい。

《技術相談窓口》


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