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2023年5月
トラブルシュートにはインスピレーションも必要

エンジンチェックランプが点滅し、エンジンが吹け上がらなくなるという、平成13年式キャラバン(車両型式KG-VWME25、エンジン型式ZD30)のトラブル事例を紹介する。

当会に持ち込まれるまでの経緯は、DTCを確認すると「43」(アクセルセンサー信号系統)を検出しており、消去は可能だが、アクセルペダルを踏み込むとすぐにDTCを再検出するという。

本誌2009年5月号でも紹介したことがあるのだが、この車のアクセルセンサーはアクセルペダルとは分離されている。(図1参照)

アクセルセンサーが取り付けられている部品は「アクセルワークユニット」という名称で、アクセルワークユニットを新品に交換したのだが、不具合は改善されなかったそうだ。

このため、配線やセンサー部及びECU部のカプラを点検したが問題がなかったので、ECU不良と判断し、ECUを中古品に交換したがそれでも改善されないという。

また、念の為、ECU部でアクセルセンサー信号、アイドルスイッチ信号、フルスイッチ信号の電圧をサーキットテスタで測定したが、全て正常に入力されていたため、行き詰ってしまったとのこと。

これまでの話からすると、悪い所は全くないのにDTCを検出しているということになる。

可能性があるとすれば、瞬間的な信号電圧の変化が発生しており、サーキットテスタではその変化を拾うことができないというケース。

よって、オシロスコープにて各種信号電圧を計測してみたのだが、信号電圧の乱れは一切なく、全て正常な信号であった。

修理書にて「43」の検出条件を再確認したが、表1に示す内容から、アクセルセンサー信号、アイドルスイッチ信号、フルスイッチ信号で判断していると考えられる。

しかし、現実にはDTC「43」を検出していることから、他にもDTC「43」を検出する条件があると考え、関連しそうな信号を調べていったところ、正常ではない信号を発見した。

アクセルペダルスイッチ信号である。

この信号は、アクセルペダルを踏んでいないときは12Vの信号で、アクセルペダルを踏むと0Vに変化するものである。

実際の車両では、アクセルペダルを踏んでも踏まなくても常に12Vのままであった。

試しに、信号線をアースにショートさせて0V信号を作ってみたところ、見事に不具合は解消され、エンジンは吹け上がるようになった。

ショートを解除すると、再び不具合が発生することから、アクセルペダルスイッチ信号が原因であることは間違いない。

アクセルペダルを踏んだ際に、アクセルセンサーの信号が変化しているのに、アクセルペダルスイッチ信号がOFFのままというのはおかしいということでDTC「43」を検出していたのが事の顛末のようだ。

実は問い合わせの段階から「アクセルワークユニット」とは別に、アクセルペダル上部にアクセルペダルスイッチというものがあることには気が付いていたのだが、この信号に関しては別のDTCが設定されており、制御の説明内容から、DTC「43」とは関連しないものと考えていた。(表2参照)

しかし、実際にはアクセルペダルスイッチ信号はDTC「43」に関連しており、DTC「43」の検出条件の一部になっていた。

修理書や解説書に詳しい内容が記載されていなかったために遠回りしてしまったが、アクセルペダルスイッチ信号の役割をあらためて考えると、DTC「43」に関連していても全く不思議ではない。

修理書や解説書を参考にしながらトラブルシュートを行うことが基本ではあるが、プラスアルファとして、インスピレーションも大切だと感じた一件であった。

《技術相談窓口》

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