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2023年8月
失火シリンダの特定に便利な失火モニタ

エンジン警告灯が点灯するという平成24年式アクセラ(車両型式ABA-BL6FJ、エンジン型式Z6)のトラブル事例を紹介する。

ダイアグノーシスコードはP0302(2番シリンダ失火)を出力した。

DTCでは2番シリンダ失火を検出しているが、エンジン不調は感じないという。

10万km近く走行しているということもあり、プラグは依頼者の工場で全数新品に交換。

また、IGコイルとインジェクタは、ユーザーさんのところに同型の車があるということで入れ替えてみたが、やはり2番シリンダの失火とのことである。

いつ失火しているかを確認するために、スキャンツールのデータモニタで失火カウンタがないか探してみた。

すると、1番から4番シリンダに対しての失火カウンタBと失火カウンタの2つの項目があった。《写真》

この失火カウンタ(B)は、失火するたびに数字が増えていくのだが、失火を検出する専用のセンサーがあるわけではなく、クランク角センサーとカム角センサーにより、各シリンダの圧縮上死点付近の回転変動から失火を推定しているようである。

また、失火カウンタと失火カウンタBの違いについては説明はないが、ずっと見ていると次のことがわかった。

失火カウンタサイクルBは、エンジン始動後、2000回くらいで一旦リセットがかかる。そして、その間に失火を検出すると、その度に失火カウンタBの回数が増えていく。ただし、失火カウンタサイクルBが2000回でリセットされると、それまでに検出した失火の回数も0回になる。

失火カウント側は、失火カウンタサイクルが400回でリセットされる違いはあるものの、あとはほぼ同じである。

どちらを参考にしても構わないが、この失火カウンタがあると、いつ何番シリンダが失火したかが分かるので非常に便利である。

実際に失火カウンタ(B)を見ながら走行すると、高回転状態からアクセルペダルをOFFにして、アイドル回転状態近くに戻った時に失火カウンタ(B)が増えることがわかった。

点火系の部品は交換しているが、念のため2番シリンダのプラグは1番シリンダと、2番シリンダのIGコイルは3番シリンダの物と入れ替えてみたが、2番シリンダが失火した。

やはり点火系は問題ないようであった。

減速時に失火しているということで、エア吸いの可能性がある。

データモニタで、O2センサーの電圧を見ながらパーツクリーナを吸気系に軽く吹き付けてみると、2番シリンダのインジェクタ付近でO2センサーは大きく反応した。

インジェクタのOリングの不良と判断し交換すると、エアの吸い込みは無くなったが失火については発生していた。

こうなると、エンジン本体側の可能性が高いので圧縮圧力とバルブクリアランスを点検することにした。

圧縮圧力は、全て約1.2Mpaで基準値内だった。

バルブクリアランスは、2番シリンダのエキゾースト側の片方以外は、ほぼ基準値内だったが、2番シリンダのエキゾースト側は、基準値が0.3mmに対して1か所は0.32mmだったが、もう1か所は0.04mmと突っ張っていた。

これではオーバーラップが大きくなり、アイドル時に失火が発生してもおかしくはなかった。

修理については依頼者に任せ、修理後、失火がなくなったという報告があった。

平成20年以降の車には、この失火カウンタの項目があると思われるので、失火に関するトラブル時には、有効に活用してもらいたい。

《技術相談窓口》

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