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2008年7月
ABS警告灯が知らせてくれるもの

 ブレーキペダルを踏むと、ABS警告灯が点灯したままになるという、平成10年式のワゴンR(GF-MC21S、エンジン型式K6A、走行3万5千km)のトラブル事例を紹介する。
  ダイアグノーシス・コードを調べてみると、「16」(ストップランプ・スイッチ系統)を表示した。
  サービスマニュアルで詳しく調べてみると、このコードを検出する条件は、「イグニッションスイッチの電圧が正常で、ブレーキペダルを踏み、ABSが作動していない時にABSコントローラのSTS端子の電圧が、基準値を外れた場合。」となっている。
  さっそくSTS端子の電圧を測定してみると、ブレーキペダルを踏まない時は0Vで、踏んだ時はほぼバッテリー電圧であった。
  ストップランプ・スイッチの信号は、ABSコントローラに入力されているのに、なぜ前述のダイアグノーシス・コードを検出するのだろうか。
  点検作業をしていると、車の後方から来た同僚が『ストップランプが両方共点灯していない……』という事を教えてくれた。
  ブレーキペダルの操作を代ってもらって調べると、ハイマウント・ストップランプしか点灯していない。
  ランプハウジングを外して点検すると、左右共バルブ切れだったので、バルブを交換し全て正常に点灯する事を確認してからエンジン始動後にもう一度ブレーキペダルを踏むと、今度はABS警告灯は点灯しなくなった。
  ストップランプ・スイッチの信号がABSコントローラに入力されなくなった場合に異常検知するものと思っていたが、実際にはそうではなく、「STS端子の電圧が基準値を外れた場合……」とあるのは、に示すようにABSコントローラの内部に設けられた、ストップランプとの分流回路の抵抗(R)両端の電位差(V1)で検出しているものと思われる。
  したがって、ABSコントローラのSTS端子の電圧を測定したところで、その値が基準値の範囲かどうかは、わからない事なのである。
  普通車の一部に装着されている、「ストップランプ球切れ警告装置」の機能を、ABSコントローラに持たせているようである。

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